燕のたより

第25回

遅れた授賞式・抵抗の美学

授賞式参加者

▲授賞式参加者:人権活動家の胡佳、ウイグルのリベラル知識人である中央民族大学のイリハム・トフティ准教授、弁護士丁家奎、弁護士郭建梅(二〇一一年受賞者)、アーティスト艾未未、王力雄と大使館関係者。みな「美による抵抗者」、「中共とは審美的に違う」、「美の自由を求める」などとウェイボーで呼ばれています。

 五月二〇日、オーセルさんからメールと写真が届きました。
 アメリカ中国大使館公使のホーム・パーティで、「勇気ある国際女性賞(International Women of Courage Awards)」の授賞式が開かれました。この賞は、世界各国で社会正義と人権のために顕著な活動を行った女性リーダーの勇気を讃え、毎年アメリカ国務省が授与しているものです。
 今年の三月、ワシントンDCに授賞式が行われましたが、オーセルさんは軟禁され、しかもパスポートも発行されないため、出席できませんでした。そのため、受賞の言葉を寄せました。

「この賞は、すべての抗議焼身自殺のチベット人に捧げます。彼(女)たちが命を惜しまず、圧政に抵抗する力こそ、私が決して諦めず、妥協しない理由です。今日のチベットでは、無数の声があげられても、強権に押し殺されています。いつか私も暗闇に覆われることを覚悟しています。この時代では、声をあげるには勇気が必要です。ですから、このような声に、耳を傾け、関心を寄せ、支援してくださることを念願します。また世界の良知を持つ人々と手をつなぎ、力を合わせて、一人一人の命が平等、自由、尊厳、権利などを享受できるように祈るばかりです」(抄訳)

イリハム准教授、オーセルさん、艾未未氏

◀イリハム准教授、オーセルさん、艾未未氏

 三月六日、私は広州でリベラル知識人、釈放されたばかりの人権活動家、気骨あるジャーナリストたちと交流していると、オーセルさんが「勇気ある国際女性賞」受賞決定というニュースが入ってきました。みな大いに喜び、「飯酔」を催し、ライターの炎を灯して祝いました。その中で、「暗黒を駆逐し、希望を灯す。殺劫を再発させず、南北両会代表はオーセルさん受賞を祝賀する」というメッセージを作り、ツイッターやメールで発信しました。『殺劫』はオーセルさんの本(集広舎)のタイトルで、「南北両会」は、釈放された人権活動家が北の北京から南の広州で合流したことを意味します。
 ところが、わずか二カ月間で、写真の中の老朱、野渡、老頼の三名は「被失踪(失踪させられた)」となりました。胸が張り裂けるほど痛いです。
 これについて、集広舎のサイトの以下のコラムをご参考にしてください。

オーセルさん「勇気ある国際女性賞」受賞で繋ぐダラムシャラ〜北京〜香港〜広州〜大阪

コラムニスト
劉 燕子
中国湖南省長沙の人。1991年、留学生として来日し、大阪市立大学大学院(教育学専攻)、関西大学大学院(文学専攻)を経て、現在は関西の複数の大学で中国語を教えるかたわら中国語と日本語で執筆活動に取り組む。編著に『天安門事件から「〇八憲章」へ』(藤原書店)、邦訳書に『黄翔の詩と詩想』(思潮社)、『温故一九四二』(中国書店)、『中国低層訪談録:インタビューどん底の世界』(集広舎)、『殺劫:チベットの文化大革命』(集広舎、共訳)、『ケータイ』(桜美林大学北東アジア総合研究所)、『私の西域、君の東トルキスタン』(集広舎、監修・解説)、中国語共訳書に『家永三郎自伝』(香港商務印書館)などあり、中国語著書に『這条河、流過誰的前生与后世?』など多数。
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