私は三月一日から二週間ほど中国でのフィールドワークに行ってきました。両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)で厳戒中の北京までは足を延ばせませんでしたが、ダライ・ラマ法王の加持祈祷を受けたカタが、インド北部のダラムシャラ〜日本のルンタ〜私〜香港〜内地の北京と、長い曲折を通して、軟禁中のオーセルさんに届いたことを確認できました。
オーセルさんはカタを受け取りとても感激しました。そして「習近平主席は中華民族復興の夢の中にいますが、それはチベット人の夢でしょうか。中国人の夢はチベット人の夢ではありません」と語りました。
三月六日、広州でリベラル知識人、釈放されたばかりの人権活動家、気骨あるジャーナリストたちと交流していると、オーセルさんがアメリカの「勇気ある国際女性賞」受賞決定というニュースが入ってきました。みな大いに喜び、「飯酔」を催し、ライターの炎を灯して祝いました。


この「飯酔」の中国語の発音は「犯罪」と同じで、今の中国では、会食で政府に不都合なことを語りあうだけでも犯罪とされます。
私たちは「飯酔」の中で、「暗黒を駆逐し、希望を灯す。殺劫を再発させず、南北両会代表はオーセルさん受賞を祝賀する」というメッセージを作り、ツイッターやメールで発信しました。「殺劫」はオーセルさんの本(集広舎)のタイトルで、「南北両会」は、釈放された人権活動家が北の北京から南の広州で合流したことを意味します。
三月十四日、香港中心部の広場では、チベット連帯集会が、仏教、キリスト教(カトリック、プロテスタント)、市民たちの共催で開かれ、抗議焼身自殺者の追悼も行われました。
会場では、日本の「チベ友」が、チベットから亡命した子どもたちの絵画を編集したパンフレットが配られていました。目にした参加者はみな関心をもって見ていました。
また、一人の高校生は「今日のチベットの状況は、香港の未来を考えさせられます。香港の自治は危ういです」と語りました。


さて、三月十六日付け「図書新聞」では、楊海英静岡大学教授が「他人の『秘密』を覗いた後の対応方法」と題してオーセル、王力雄、劉燕子『チベットの秘密』(集広舎)の書評を寄稿しています。この「秘密」は、中国政府が厳重な情報統制で隠している「秘密」です。そして、楊教授は、日本は何をすべきだろうか、ただ他人の「秘密」を覗いただけで、何もしなくていいのだろうか、と問いかけています。
広州や香港でも自覚ある人たちは、前記のようです。日本でも、と祈ります。
