集広舎の本

フロンティアと国際社会の中国文化大革命

frontier201611

書名:フロンティアと国際社会の中国文化大革命
副題:いまなお中国と世界を呪縛する50年前の歴史
編著者:楊海英(YANG Haiying)
発行日:2016年11月15日
集広舎/定価(本体3600円+税)
判型:上製・A5 ISBN978-4-904213-42-1 C3022

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中国文化大革命50周年記念。モンゴル・ウイグル・インドネシア・アンデス・フランス・イギリス・キリスト教そして日本。それらの地域・歴史的文脈から「文革」の意味と今後の世界を探る。10名の気鋭の研究者による日本発信の画期的論文集。

「なぜ今、中国文化大革命と世界との関係について考えるのか」。文化大革命は未だに終わっていないからである。文革が終了してから50 年も経つが、歴史と化していないから、中国はさまざまな国内問題を抱えているし、国際社会にも深刻な影響を与えつづけている。〔本文より抜粋〕
 

【目次】

まえがき 中国文化大革命と国際社会との関係の再検討 楊海英

第1部フロンティアと周縁の中国文化大革命
 第1章 周縁の文化大革命から文化大革命研究のフロンティアへ 谷川真一
 第2章 モンゴル人大量粛清運動の政治的背景に関する一考察 ハラバル
 第3章 日本から医学知識を学んだモンゴル人医学者たちの文化大革命 ハスチムガ
 第4章 ウイグル人の中国文化大革命
― 既往研究と批判資料からウイグル人の存在を抽出する 楊海英
 第5章 文化大革命とキリスト者
― 「我ら信仰の為に」 劉燕子

第2部 国際社会の中国文化大革命
 第6章 孤立した国の世界革命
― 1960 年代後半日本・中国・インドネシアの革命連鎖 馬場公彦
 第7章 文化大革命期における中国援助とアフリカ外交の役割 ウスビ・サコ
 第8章 フランスにおけるマオイスムは誤解だったのか?
― コミューンの起源と行方をめぐって 上利博規
 第9章 文化大革命以後の「文化」の政治 福岡愛子
 第10章 アンデスの毛沢東
― 先住民、プロレタリアート、農民 細谷広美

 中国と中国文化大革命は日本批判の素材に非ず──あとがきにかえて 楊海英
 

【執筆者略歴】

楊海英(大野旭)
静岡大学人文社会科学部教授。主な著書に『日本陸軍とモンゴル』(中公新書、2015年)『チベットに舞う日本刀──モンゴル騎兵の現代史』(文藝春秋、2014年)など多数。

谷川真一
スタンフォード大学大学院社会学研究科博士課程修了(Ph.D.)。現在、神戸大学准教授。専門分野は、社会学、現代中国研究。主な業績として『中国文化大革命のダイナミクス』(御茶の水書房、2011年)、“The Policy of the Military ‘Supporting the Left’ and the Spread of Factional Warfare in the Countryside: Shaanxi, 1967-1968,” Modern China(forthcoming)

ハラバル(哈日巴拉、Qarabars)
九州大学比較社会文化学府博士号取得(2007年)。上海大学歴史学部教員。主な論文に「新疆的政治力学与中共的民族政策」、《二十一世紀》双月刊、第 109号(2008年 8-9月号)、香港中文大学、2008年。“Attempts to transform CCP’s ethnic minority policy in the early 1980s” ,《The Chinese Historical Review 》volume15,number2,fall.2008(美国留美史学会出版、インディアナ大学)。「戦後東北的政治力学与中共的民族政策」、《蒙 古学問題与争論》(QMD)、国際日本文化学会、2010年号など。

ハスチムガ(Qaschimug)
宇都宮大学国際学研究科博士課程。主な論文に「内モンゴルにおける衛生・医療活動 に関する調査報告について──善隣協会と陸軍軍医部による調査」(国際シンポジウム『20世紀初、中国周縁エスニシティの覚醒に関する比較研究』発表用論文、2014年12月20日)、「モンゴル自治邦における日本の衛生・医療活動──伝統社会から近代社会への移行」楊海英編『交感するアジアと日本』(静岡大学人文社会科学部『アジア研究』別冊3)。

劉燕子
作家、現代中国文学者。日本語・中国語のバイリンガルで著述、翻訳し、著訳書に『中国低層訪談録──インタビューどん底の世界』(集広舎)、『殺劫── チベットの文化大革命』(共訳、集広舎)、『天安門事件から「08憲章」へ』(共著、藤原書店)、『「私には敵はいない」の思想』(共著、藤原書店)、『没有墓碑的草原』(共訳、八旗文化、台北)など多数。集広舎Webのコラム「燕のたより」やフェイスブックなどSNSで最新のトピックを評論。

馬場公彦
出版社勤務。編集者。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、学術博士。主な著書に『ビルマの竪琴』をめぐる戦後史』(法政大学出版局、2004年)、『戦後日本人の中国像──日本敗戦から文化大革命・日中国交回復まで』(新曜社、2010年)、『現代日本の中国像──日中国交正常化から天安門事件・天皇訪中まで』(新曜社、2014年)など多数。

ウスビ・サコ(Qussouby SACKO)
京都精華大学人文学部教授。マリ出身。北京語言大学、南京東南大学等を経て、京都大 学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了。博士(工学)。共編著書に『知のリテラシー・文化』(ナカニシヤ出版、2007年)、『マリを知るための58章』(明石書店、2015年)、 論文に「バマコの集合居住の生成と中庭型在来住宅の形成過程の考察」など。

上利博規
静岡大学人文社会科学部教授。主な著書に『デリダ(Century Books──人と思想)』(清水書院、2014年)など。

福岡愛子
社会学者・翻訳家。主な著書に『文化大革命の記憶と忘却』(新曜社、2008年)、『日本人の文革認識』(新曜社、2014年)など。訳書に、王泰平著『「日中国交回復」日記』(勉誠出版、2012年)、リチャード・ウォーリン著『パリに吹いた「東風」』(岩波書店、2014年)。

細谷広美
成蹊大学文学部教授。主な著書に『アンデスの宗教的世界──ペルーにおける山の神信仰の現在性』(明石書店、1997年)、また論文に「人権のグローバル化と先住民:ペルーにおける紛争、真実委員会、平和構築」(『文化人類学』77(4)、566-587、2013年)など多数。
 

【修正】283ページ
以下の部分は引用文として掲載しましたが、本文の誤りでした。
〈誤〉の部分の ── は削除、   は〈正〉の    に修正いたします。
〈正〉の部分が正しい表記です。
間違いがありましたことをお詫び申し上げます。

〈誤〉
 大人も子どもも食料が不足し空腹に苛まれるなか、まだ幼かった子どもがサトウキビ畑に行ってサトウキビをかじった。甘いサトウキビの茎は、平時であれば子どもたちに与えられるおやつである。しかし、党は腹をすかせた子どものこのような行為も、「個人主義」とし厳しく罰した。
 母親は、裸にされむち打たれた我が子を助けたいと思っても、もし手を差し伸べればより苛酷な罰を、場合によっては殺されるかもしれないしれない罰を我が子がうけるかもしれないため、黙ってみつめることしかできなかった。
政府軍による追跡が厳しくなってくると、逃げる際に政府軍にみつか らないよう、センデロ・ルミノソは母親たちに赤子や小さな子どもを殺 害することを命令してすらいる。(Jiménez 2007:228)

〈正〉
 大人も子どもも食料が不足し空腹に苛まれるなか、まだ幼かった子どもがサトウキビ畑に行ってサトウキビをかじった。甘いサトウキビの茎は、平時であれば子どもたちに与えられるおやつである。しかし、党は腹をすかせた子どものこのような行為も、「個人主義」とし厳しく罰した。
 母親は、裸にされむち打たれた我が子を助けたいと思っても、もし手を差し伸べればより苛酷な罰を、場合によっては殺されるかもしれない罰を我が子がうける可能性があるため、黙ってみつめることしかできなかった。
 政府軍による追跡が厳しくなってくると、逃げる際に政府軍にみつからないよう、センデロ・ルミノソは母親たちに赤子や小さな子どもを殺害することを命令してすらいる。(Jiménez 2007:228)