多様性を尊重する「移民大国」をアイデンティテイとして自負してきたアメリカは、共和党のドナルド・トランプが大統領に就任して以来国論が真二つに分断され、トランプは最近、憎悪を込めた口調で「もう移民はいらない」とまで広言している。この大統領には、白人至上主義の陰が色濃く付きまとう。
徳川幕府がヨーロッパ船の来航を平戸と長崎に制限した同じころの1620年11月、北米東海岸のコッド岬に3本マストの商船「メイフラワー号」が到着した。イギリス南西部のプリマスを出港して大西洋横断の65日間の航海だ。上陸した約100人の乗員中35人は自らを「セイント(聖徒)」と呼ぶ宗派のキリスト教信者、いわゆる清教徒であり、彼らは信仰の自由を実現する暮らしを求めてやってきた。清教徒に象徴される「自由な新天地を目指した移住」というアメリカ建国像は、世界に広く深く浸透している。アメリカにとってみれば誠に美しい伝説ではあるが、実は彼らは最初の移住者ではないし、自由な移住を希望した人々はむしろ少数派であった。
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コラムニスト