有料記事/百鬼夜行の国際政治

第21回

「ビジネス」に目覚めたスターリン

英グラフトン・アンダーウッド飛行場で出撃の準備をする米兵(American Air Museum in Britain)英グラフトン・アンダーウッド飛行場で出撃の準備をする米兵(American Air Museum in Britain)

 アメリカが陸軍の一部門として航空部隊を開設したのは1926年7月だ。13年後、第32代大統領フランクリン・ローズヴェルトは「1940年国防法」に署名、航空部隊に3億ドルの予算を配分し、航空機6000機、約3200人の将校と兵員45000人の部隊編成を命じた。当時、航空機産業の先進地はドイツ、イギリス、フランス、イタリアなどだった。アメリカは航空機を発明したライト兄弟の国ながら、軍事面への応用ではヨーロッパ勢の後塵を拝しており、急速な発展が求められていたのだ。

 そのアメリカが光明を見出したのはイタリア軍人ジュリオ・ドーエが提唱した航空戦略である。彼は1921年10月に出版した「空の支配(The Command of the Air)で、「航空作戦は敵軍そのものよりも、敵の背後の工業地帯、鉄道網や道路網などのインフラ、都市と産業労働者などを標的にして空爆し、戦う国家意思を挫く方がより効果がある」と主張した。非戦闘員の殺戮を勧める、残虐で野蛮極まりない戦争指南書である。

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コラムニスト
竜口英幸
ジャーナリスト・米中外交史研究家・西日本新聞TNC文化サークル講師。1951年 福岡県生まれ。鹿児島大学法文学部卒(西洋哲学専攻)。75年、西日本新聞社入社。人事部次長、国際部次長、台北特派員、熊本総局長などを務めた。歴史や文化に技術史の視点からアプローチ。「ジャーナリストは通訳」をモットーに「技術史と国際標準」、「企業発展戦略としての人権」、「七年戦争がもたらした軍事的革新」、「日蘭台交流400年の歴史に学ぶ」、「文化の守護者──北宋・八代皇帝徽宗と足利八代将軍義政」、「中国人民解放軍の実力を探る」などの演題で講演・執筆活動を続けている。著書に「海と空の軍略100年史──ライト兄弟から最新極東情勢まで」(集広舎、2018年)、『グッバイ、チャイナドリーム──米国が中国への夢から覚めるとき 日本は今尚その夢にまどろむのか』(集広舎、2022年)など。
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