有料記事/百鬼夜行の国際政治

第20回

対日戦へ米ソ同盟が始動

 軍人政治家ウィンストン・チャーチルは、1953年12月にノーベル文学賞を受賞した。平和賞ならともかく、政治家の文学賞受賞は初めて。二度目となる首相職にあったため、授賞式にはメアリー夫人が出席しスピーチを読み上げた。1948年から刊行が始まった彼の代表作『第二次世界大戦』は、この年秋に最終巻の第6巻『勝利と悲劇』が出版されていた。

 授賞式でスウェーデン王立アカデミーの会員による開会スピーチは冒頭、ジュリアス・シーザー、マルクス・アウレリウス(ローマ五賢帝の一人。著書に『自省録』)、ナポレオン・ボナパルトの名を挙げ「偉大な政治家であり戦士、かつまた偉大な書き手でもある者はとても稀である」とチャーチルへの文学賞授賞の意義を強調し、“言葉で絵を描く作家”と評されたチャーチルの文学活動の軌跡を紹介した。『第二次世界大戦』を読む度に、私は彼の深い人間洞察力、政治的な使命感の強さ、戦略的思考の的確さに魅入られる。

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コラムニスト
竜口英幸
ジャーナリスト・米中外交史研究家・西日本新聞TNC文化サークル講師。1951年 福岡県生まれ。鹿児島大学法文学部卒(西洋哲学専攻)。75年、西日本新聞社入社。人事部次長、国際部次長、台北特派員、熊本総局長などを務めた。歴史や文化に技術史の視点からアプローチ。「ジャーナリストは通訳」をモットーに「技術史と国際標準」、「企業発展戦略としての人権」、「七年戦争がもたらした軍事的革新」、「日蘭台交流400年の歴史に学ぶ」、「文化の守護者──北宋・八代皇帝徽宗と足利八代将軍義政」、「中国人民解放軍の実力を探る」などの演題で講演・執筆活動を続けている。著書に「海と空の軍略100年史──ライト兄弟から最新極東情勢まで」(集広舎、2018年)、『グッバイ、チャイナドリーム──米国が中国への夢から覚めるとき 日本は今尚その夢にまどろむのか』(集広舎、2022年)など。
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