軍人政治家ウィンストン・チャーチルは、1953年12月にノーベル文学賞を受賞した。平和賞ならともかく、政治家の文学賞受賞は初めて。二度目となる首相職にあったため、授賞式にはメアリー夫人が出席しスピーチを読み上げた。1948年から刊行が始まった彼の代表作『第二次世界大戦』は、この年秋に最終巻の第6巻『勝利と悲劇』が出版されていた。
授賞式でスウェーデン王立アカデミーの会員による開会スピーチは冒頭、ジュリアス・シーザー、マルクス・アウレリウス(ローマ五賢帝の一人。著書に『自省録』)、ナポレオン・ボナパルトの名を挙げ「偉大な政治家であり戦士、かつまた偉大な書き手でもある者はとても稀である」とチャーチルへの文学賞授賞の意義を強調し、“言葉で絵を描く作家”と評されたチャーチルの文学活動の軌跡を紹介した。『第二次世界大戦』を読む度に、私は彼の深い人間洞察力、政治的な使命感の強さ、戦略的思考の的確さに魅入られる。
ご購入手続きは「codoc株式会社」によって代行されます
コラムニスト