私が最も好きな映画作品の一つに、セルジオ・レオーネ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト(昔、西部で)」がある。1968年12月封切りのイタリア映画だが、51年を経ても映画館で繰り返し上映されている名作である。学生時代に大学近くの名画座で連続2回観たのを皮切りに半世紀近く。今なお見るたびに新鮮な感慨が沸く。
大陸横断鉄道の建設が進むアリゾナ州。鉄道を太平洋まで延伸することを悲願にしている余命短い鉄道王と彼を取り巻く3人のガンマン、さらに鉄道敷設予定地に隣接する農場主の再婚相手の元高級娼婦が絡み合う。封切り当初は「スパゲッティ・ウエスタン」と揶揄されたようだが、名声は直ぐに不動のものとなった。ガンマンたちが戦いを繰り返すなかで一人また一人と姿を消して行くのに反して鉄道敷設の槌音は高まり、ラストシーンは、鉄道建設の工事場面が大写しになって終わる。音楽劇のように全編にエンリオ・モリコーネの音楽が流れる。この映画は鉄道による新時代の夜明けを迎えた西部の発展を予感させつつ、かつてのワイルド・ウエスト、西部開拓時代へ別れを告げる挽歌なのである。
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コラムニスト