有料記事/百鬼夜行の国際政治

第19回

地上の野獣 vs 海の野獣

エルベ川の橋上で握手する米兵(左)とソ連兵(Sputnik)エルベ川の橋上で握手する米兵(左)とソ連兵(Sputnik)

 世界を覆うコロナ禍のただ中、ほとんど話題にならなかったが、米ソ首脳は4月25日に「エルベの邂逅かいこう」75周年の共同声明を発表した。1945年4月25日、ドイツの首都ベルリンを目指し、東から進軍してきたソ連軍と西から兵を進めたアメリカ軍がベルリンの南約130キロメートル地点、ライプツィヒ近郊のエルベ川西岸で出会い、両軍の兵士は破壊されたエルベ川の橋上で握手した。別々の戦場で戦ってきた両軍兵士が初めて出会ったのだ。両国にとっても、第二次世界大戦史にとっても象徴的な出来事となった。二週間後の5月8日ナチスドイツは無条件降伏し、それから3カ月後の8月8日、ソ連はヤルタ会談での約束通り日本との中立条約を破棄し、満州に攻め込んだのである。

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コラムニスト
竜口英幸
ジャーナリスト・米中外交史研究家・西日本新聞TNC文化サークル講師。1951年 福岡県生まれ。鹿児島大学法文学部卒(西洋哲学専攻)。75年、西日本新聞社入社。人事部次長、国際部次長、台北特派員、熊本総局長などを務めた。歴史や文化に技術史の視点からアプローチ。「ジャーナリストは通訳」をモットーに「技術史と国際標準」、「企業発展戦略としての人権」、「七年戦争がもたらした軍事的革新」、「日蘭台交流400年の歴史に学ぶ」、「文化の守護者──北宋・八代皇帝徽宗と足利八代将軍義政」、「中国人民解放軍の実力を探る」などの演題で講演・執筆活動を続けている。著書に「海と空の軍略100年史──ライト兄弟から最新極東情勢まで」(集広舎、2018年)、『グッバイ、チャイナドリーム──米国が中国への夢から覚めるとき 日本は今尚その夢にまどろむのか』(集広舎、2022年)など。
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