有料記事/百鬼夜行の国際政治

第01回

蒋経国と鄧小平──二つの改革開放

鄧小平鄧小平の巨大な看板

 今年は中国の鄧小平が工業、農業、科学技術、国防の四つの近代化を掲げ「改革開放」、つまり市場経済の導入へと舵を切って40年を迎える節目の年である。鄧小平が権力を確立したのは、中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議(「3中全会」1978年12月18~22日)で、毛沢東の負の遺産の解消-文化大革命で失脚した人々の復権や新たな国造りに着手した。共産主義国家・中国の一大転換点である。

 独裁体制を敷いたかに見える現在の習近平政権は「改革開放」を死語にした。官製メディアにも40周年記念座談会の記事が時たま小さく出る程度だった。ところが8月3日、新華社のサイトが突然、トップに大見出しで「一層力を込めて改革開放を進めよう」との新華社評論員の記事を据えたのには驚いた。それまでは人民日報も新華社も「習近平」の記事が連日でかでかと載って、辟易するほどだったのだから。避暑地・北戴河での会議の時期でもあり、政治的意図がないとはいえまい。

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コラムニスト
竜口英幸
ジャーナリスト・米中外交史研究家・西日本新聞TNC文化サークル講師。1951年 福岡県生まれ。鹿児島大学法文学部卒(西洋哲学専攻)。75年、西日本新聞社入社。人事部次長、国際部次長、台北特派員、熊本総局長などを務めた。歴史や文化に技術史の視点からアプローチ。「ジャーナリストは通訳」をモットーに「技術史と国際標準」、「企業発展戦略としての人権」、「七年戦争がもたらした軍事的革新」、「日蘭台交流400年の歴史に学ぶ」、「文化の守護者──北宋・八代皇帝徽宗と足利八代将軍義政」、「中国人民解放軍の実力を探る」などの演題で講演・執筆活動を続けている。著書に「海と空の軍略100年史──ライト兄弟から最新極東情勢まで」(集広舎、2018年)、『グッバイ、チャイナドリーム──米国が中国への夢から覚めるとき 日本は今尚その夢にまどろむのか』(集広舎、2022年)など。
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