アメリカの首都ワシントンで7月4日に行われた今年の独立記念日の祝賀式典は、航空ショーと見まがうばかりの異様なものだった。リンカーン記念堂から連邦議事堂に至る東西約3キロメートルのナショナル・モールを埋めた人々の上空を、大統領専用機エアフォース・ワンを手始めに、海兵隊のVH-92オスプレイ、海軍のブルー・エンジェルス・チーム、空軍のB-2スピリット・ステルス爆撃機とF-22ラプター・ステルス戦闘機、沿岸警備隊のC-130輸送機、陸軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターが次々に飛行したのだ。しかも大統領が演説するリンカーン記念堂前には、陸軍のアブラハム戦車とブラッドリー戦闘車両(軽戦車)を配するという念の入れようだ。第45代大統領ドナルド・トランプは「米国に敬礼を(サリュート・トゥー・アメリカ)」と題したスピーチで軍を讃えご満悦の表情だった。
しかし、独立記念日の主役は「独立宣言」である。この祝日に、歴代大統領は独立宣言に敬意を表し、記念式典などには顔を出さないか、控えめに参加するだけにとどめるのが慣例だった。1951年、例外的に独立記念日にスピーチをした第33代大統領ハリー・S・トルーマンは、リンカーン記念堂の真向かいに立つワシントン記念塔を会場に選んだ。朝鮮戦争の戦況を報告し「朝鮮戦争で亡くなった兵士たちはアメリカ市民戦争(独立戦争)の死者と同様に、人民の人民による人民の政府のために戦い倒れたのだ」と語り「この国の民衆は独立以来175年にわたり、自由のために共に立ち上がってきたのだ」と共産主義との戦いの意義を強調したのだった。
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コラムニスト