16世紀のフランドル地方の画家ピーテル・ブリューゲルに「バベルの塔」という大作がある。旧約聖書の「創世記」を題材に、人類がレンガとアスファルトで天に届く塔を建設する様子を描いた作品だ。七層、八層と建築が進む巨大な塔が、縦114センチ、横155センチの画面中央に圧倒的迫力でそびえ立つ。手前に塔を発注したニムロデ王をやや大きめに描いている他は、材木を運ぶ筏、巻き上げ機でレンガを上げる人夫たち、建物のアーチ状の木組みなどが巨大な細密画として仕上げられている。宗教画でありながら、明るさがみなぎる風俗画のようで、観る者を飽きさせない。そして塔の外周を廻る道路は、巨大ならせんの渦となって上へ上へと進む。一周すれば建物の中心軸の上方へ一段ずつ高くなるらせんの特性が、天の高みを目指す人間の憧れを象徴している。
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コラムニスト