ハリウッド映画『シャンハイ・ヌーン』(2000年作品)は、香港出身のジャッキーチェンがテキサス出身のオーウェン・ウィルソンと共演した西部劇アクション映画だ。清王朝の王女が誘拐され、近衛兵のジャッキーがカリフォルニア州の東隣り、ネヴァダ州の州都カーソン・シティ目指して身代金を運び、王女救出を目指すという荒唐無稽な筋立ての映画である。間抜けでお人よしの列車強盗を演じるウィルソンとジャッキーのやり取りが何とも楽しいのだが、実は筋書きの背景に重大な時代考証が潜ませてある。一つはカーソン・シティという町であり、もう一つは王女が拘束されている鉱山で、多数の清国人クーリー(苦力=イギリスがインド人と清国人の隷属的契約労働者に対して用いた呼称)が酷使されている状況である。
清国からアメリカにクーリーが入ってきたのは、1848年にカリフォルニア州で金鉱が見つかりゴールド・ラッシュが起きてからだが、なぜ太平洋を横断して清国人労働者が米国東海岸に押し寄せたのか。それを理解するには、長くはなるがアフリカの黒人奴隷貿易まで歴史をさかのぼらなければならない。
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コラムニスト