有料記事/百鬼夜行の国際政治

第25回

議事堂を襲った南軍旗

初演当時、映画館で使用された『風と共に去りぬ』のポスター(1939 Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)初演当時、映画館で使用された『風と共に去りぬ』のポスター(1939 Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

 アメリカがメキシコとの戦争に勝利してカリフォルニアを手に入れ、大西洋と太平洋の両洋に面する巨大国家としての道を歩み始めたころ、国を揺るがす「市民戦争(南北戦争=1861年~1865年)」が起きた。合衆国から離脱した南部11州は「コンフェデラシー・オブ・アメリカ(南部同盟)」を結成し、大統領と副大統領を選び、合衆国と同様の政治体制を敷いて宣戦した。第16代合衆国大統領エイブラハム・リンカーン率いる「ユニオン(北部連合)」にとって、南部は“反乱国家”だった。  南部ジョージア州を舞台にこの時代を描いた1939年の映画『風と共に去りぬ』の冒頭、女声合唱が緩やかにハミングで歌う南部同盟の国歌「ディキシーズ・ランド(南部の大地)」は葬礼の野辺送りを思わせる。夕暮れ時、牧童や牛飼いたちが家に戻る姿を背景に、映画の脚本陣に加わったベン・ヘクトの手になる文言が映し出され「かつて綿花栽培で栄え古き良き南部と呼ばれたこの土地の繁栄と貴族さながらの文化は、今では夢でしかなく、風と共に去ってしまった(要約)」と全編を暗示する。

ご購入手続きは「codoc株式会社」によって代行されます

コラムニスト
竜口英幸
ジャーナリスト・米中外交史研究家・西日本新聞TNC文化サークル講師。1951年 福岡県生まれ。鹿児島大学法文学部卒(西洋哲学専攻)。75年、西日本新聞社入社。人事部次長、国際部次長、台北特派員、熊本総局長などを務めた。歴史や文化に技術史の視点からアプローチ。「ジャーナリストは通訳」をモットーに「技術史と国際標準」、「企業発展戦略としての人権」、「七年戦争がもたらした軍事的革新」、「日蘭台交流400年の歴史に学ぶ」、「文化の守護者──北宋・八代皇帝徽宗と足利八代将軍義政」、「中国人民解放軍の実力を探る」などの演題で講演・執筆活動を続けている。著書に「海と空の軍略100年史──ライト兄弟から最新極東情勢まで」(集広舎、2018年)、『グッバイ、チャイナドリーム──米国が中国への夢から覚めるとき 日本は今尚その夢にまどろむのか』(集広舎、2022年)など。
関連記事