有料記事/百鬼夜行の国際政治

第18回

ロシアの軍事戦略と北方領土

1855年に日本とロシア帝国が定めた国境線(外務省)1855年に日本とロシア帝国が定めた国境線(外務省)

 今年は米、英、ソの三首脳が第二次世界大戦後の世界秩序の構築を協議した、1945年2月のヤルタ会談から75周年の節目の年に当たる。クリミアの保養都市ヤルタで8日間にわたり開かれた会談では、対日戦にソ連を何としても引き込みたいという米大統領フランクリン・ローズヴェルトの焦りに乗じ、ソ連首相ヨシフ・スターリンは「南樺太、千島列島、満州での権益と引き換えに対日戦に参戦する」秘密協定を手に入れた。戦後の北方領土(国後クナシリ歯舞ハボマイ諸島、色丹シコタン択捉エトロフ)返還問題はこの秘密協定に起因している。

 米英は第二次世界大戦における「領土不拡大」の原則を大西洋憲章とカイロ宣言に盛り込み、ソ連もカイロ宣言に参加していた。「この戦争によって新たな領土を手に入れることはできない」、「この戦争は領土獲得のための戦争ではない」という公約を高らかに世界に示していたのだが、偽りのスローガンで終わった。では、日本とロシアの間で、北方領土は歴史的にどのような位置づけだったのか。

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コラムニスト
竜口英幸
ジャーナリスト・米中外交史研究家・西日本新聞TNC文化サークル講師。1951年 福岡県生まれ。鹿児島大学法文学部卒(西洋哲学専攻)。75年、西日本新聞社入社。人事部次長、国際部次長、台北特派員、熊本総局長などを務めた。歴史や文化に技術史の視点からアプローチ。「ジャーナリストは通訳」をモットーに「技術史と国際標準」、「企業発展戦略としての人権」、「七年戦争がもたらした軍事的革新」、「日蘭台交流400年の歴史に学ぶ」、「文化の守護者──北宋・八代皇帝徽宗と足利八代将軍義政」、「中国人民解放軍の実力を探る」などの演題で講演・執筆活動を続けている。著書に「海と空の軍略100年史──ライト兄弟から最新極東情勢まで」(集広舎、2018年)、『グッバイ、チャイナドリーム──米国が中国への夢から覚めるとき 日本は今尚その夢にまどろむのか』(集広舎、2022年)など。
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