有料記事/百鬼夜行の国際政治

第11回

日米安保の要に急浮上したF-35B

護衛艦「かが」のスピーチ会場に向かう日米首脳(防衛省)護衛艦「かが」のスピーチ会場に向かう日米首脳(防衛省)

 元号が「令和」に代わったばかりの5月下旬、「令和」時代最初の国賓としてトランプ米大統領が日本を訪問し、四日間にわたり安倍首相と濃密な首脳会談を繰り広げた。

 外交に秘密は付き物だし、秘密合意もあるかもしれないが、今回両首脳が世界に発したメッセージは極めて明確で、かつまた強烈だった。佐世保を母港とする米艦「ワスプ」と呉を母港とする海上自衛隊の護衛艦「かが」とを、在日米海軍司令部と海自の司令部がある横須賀に来航させ、艦上で両首脳が日米安保への揺るぎない決意を語ったのだ。しかもこれから導入する最新鋭ステルス機F-35Bを搭載できるよう「かが」と先行艦の「いずも」ともども改修することで、日本が中国を凌駕する海軍力の整備へと向かう方針が、これ以上ないほどの華々しい舞台装置の上で発信された。劇的なプレゼンテーションは中国、さらには北朝鮮やロシアに向けられているのは明らかで、とりわけ「自己過信」に酔っている中国海軍に衝撃が走ったであろうことは容易に想像できる。ロッキード・マーティン社のF-35BライトニングⅡ戦闘機は日米安保の要へと急浮上し、「接近させず領域に立ち入らせない(A2・AD戦略)」を掲げて膨張し続ける中国軍を、日米で押し戻す戦略をこれから遂行することになるだろう。

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コラムニスト
竜口英幸
ジャーナリスト・米中外交史研究家・西日本新聞TNC文化サークル講師。1951年 福岡県生まれ。鹿児島大学法文学部卒(西洋哲学専攻)。75年、西日本新聞社入社。人事部次長、国際部次長、台北特派員、熊本総局長などを務めた。歴史や文化に技術史の視点からアプローチ。「ジャーナリストは通訳」をモットーに「技術史と国際標準」、「企業発展戦略としての人権」、「七年戦争がもたらした軍事的革新」、「日蘭台交流400年の歴史に学ぶ」、「文化の守護者──北宋・八代皇帝徽宗と足利八代将軍義政」、「中国人民解放軍の実力を探る」などの演題で講演・執筆活動を続けている。著書に「海と空の軍略100年史──ライト兄弟から最新極東情勢まで」(集広舎、2018年)、『グッバイ、チャイナドリーム──米国が中国への夢から覚めるとき 日本は今尚その夢にまどろむのか』(集広舎、2022年)など。
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