燕のつぶやき
2012年9月、尖閣諸島(中国名は釣魚島)の国有化に端を発した反日デモは、200以上の都市に広がった。反日デモは、統制がますます強化される中国で、唯一許容される示威行動である。極めて弱い立場に置かれた市民でも、これをチャンスとばかりに参加し、さらに日ごろのうっぷん晴らしも加わり激越になり、騒動や暴動さえ起きた。しかし、反日を激しく叫んでも、実生活は日本抜きには成り立たない。
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はちまきに「抗日」、「保吊」、「還我(返還)」とあり、二番目の「吊」は尖閣諸島の中国名「魚釣島」の「釣」と同じ発音(diao)で、さらに自分の首を「吊」ることもかけている。「保釣」は釣魚島を守れという意味のスローガンで、それを「保吊」と揶揄している。
表面では、「保釣」と愛国主義を勇んで発揚しても、その裏には、中国政府への不満や批難が内包されている。
強引な家の強制立ち退きでは、生活の基盤が奪われて路頭に迷わざるを得なく、抗議焼身自殺者さえ出ている。
一人っ子政策は国策で、有無を言わさず不妊手術や妊娠中絶が強制される。
「農民工(出稼ぎ農民)」が資金を出し合って開設する、言わば手作りの学校は、しばしば無許可だとして閉鎖されが、その代替はなく、教育格差は広がるばかりである。北京を「帝都」と表現しているのは皮肉である。
有害物質が混入された食品は牛乳に限らず、枚挙に暇がない。
このように問題が山積する現状への憤懣と過去の戦争の怨念が、鬱屈した心理の中で密接に絡みあい、反日と反体制が結合している。基本的人権が守られないのに、「愛国」で「保釣」を叫ぶ荒唐無稽が諷刺されている。
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中央の人物は鄧小平で、彼は毛沢東の死後、中華人民共和国の最高指導者となる。毛沢東が発動した文化大革命によって混乱・疲弊した中華人民共和国の再建に取り組み、「改革開放」政策を推進して社会主義経済の下に市場経済の導入を図るなど、現代化建設の礎を築く一方で、天安門事件(血の日曜日)では民主化運動を武力鎮圧した。彼の「黒い猫でも、白い猫でも、ネズミを捕るのが良い猫だ」との現実主義的な発言はよく知られるが、この現実路線を共産党独裁体制で進めた結果、一方では武力を背景にした強権政治、他方では金権政治となったと諷刺している。
左の黒猫の持つ鎌、右の金貨がつまった袋の鎌とハンマーは共産党を象徴している。戦車に人がひき殺された流血の惨事は、実際に天安門事件で起きた。今年は25周年である。その痛みは弱まるどころか、ますます強まっている。
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8月17日、香港で行われた中国共産党政権支持(親中共)派のデモ行進を諷刺した漫画。デモ行進は、愛国主義の延長で「愛港(香港を愛する)」をスローガンに掲げていたが、実際は強権政治に媚びを売る「愛跪」主義だと痛烈に揶揄した。漫画では「跪」が、くにがまえの口の中に「跪」を入れた造語が使われている。先頭は毛沢東の肖像画を跪いて掲げている。
しかも、中国本土の上海、山東、吉林など各省・市から動員された「愛跪」代表団は旅費や食費を支給され、さらにシャネルやプラダのショッピング付きである。この他に、安全な粉ミルク、サラダ油、ナプキンなど一般の生活用品まで買いあさったという。
これについて、ネットでは多くが指摘していたが、日本語の記事としてはロイターが香港から17日付で「多くの参加者はロイターに対し、さまざまな政治・ビジネス団体から交通手段の提供を無料で受けたと明らかにした。中国と関係の深い企業や団体が動員をかけた可能性もある。ある男性は香港近郊からバスに乗ってきたとし、30香港ドルの昼食費を受け取ったと明らかにした」と報道した。
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屠殺者のエプロンは中国の国旗、中国共産党の党旗を示唆している。政府に賛同する国民を豚に喩え、一党独裁の大陸に呑み込まれない H.K.=香港、TAIWAN=台湾を「野豚」と表現して、諷刺している。牙は独裁体制への反対が存在していることを示唆している。
香港は、1997年にイギリスから中国に返還されたものの、「一国両制」のシステムにより高度な自治が保障されている。
台湾は1980年代後半から民主化を進め、1996年には総統の直接選挙を実施し、「一つの中国」の下、同じ中国人で自由、自治、普通選挙などを享受しているため、中国本土へ民主化を発信する重要な役割を果たしている。
これに対して、中国政府は警戒し、影響力を強めようとしている。ぶ厚い肉切り包丁は、それを示唆しており、また笑い顔で手を挙げる豚は、牙を抜かれ飼い馴らされたことを諷刺している。