BOOKレビュー

書評『グッバイ、チャイナドリーム』

グッバイ、チャイナドリーム

書名:グッバイ、チャイナドリーム
副題:米国が中国への夢から覚めるとき 日本は今尚その夢にまどろむのか
著者:竜口英幸
発行:集広舎/四六判/並製/351頁
価格:本体2,200円+税
発売予定日:2022年1月20日
ISBN:978-4-86735-023-2 C0022
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蓮坊公爾「熟読玩味」

 集広舎新刊『中国からの独立──抹殺される少数民族』の実態トギュメントには〈目から鱗〉、「書評」を発信、賛同を得た。
 其れも此れも貴・集広舎為る版元の〈支那へのクサビ〉が、常に真っ当な指針で貫かれて居るからである…。
 本書は、ずばり米帝国主義の東洋の神秘(?)中国大陸への熱き思い。「清国ブーム」(お茶と阿片)建国後すぐ貿易を始めた。其れが四百年続き、対極として嫌日本をもたらした歪んだ実態を解明。
 一例はキッシンジャー、支那を崇め日本増悪「最悪なるジャブ」と侮る。
 文中、南北戦争(シビルワー)で死者62万は、何と第二次世界大戦の米軍30万人の倍以上だ。
 時の人・リンカーンの平等社会実現も詳しく著して居る。
 フーバー前大統領から〈戦争犯罪人〉と卑下されたルーズベルトは、栄美齢(蒋介石妻・英語堪能)の美貌に酔い、スターリンをも讃える奇々怪々な俗物。
 ルーズベルトが大統領の時、大日本帝國が対米戰を余儀なくされた。正に国家的悲劇だと云える。更に、ドイツ製暗号機を使用した日本は、全て解読されて居たそうだ。
 為らば戦後の我が国は如何か。「池田勇人以降〈政経分離〉、中国の政治に目をつぶり、冷静に中国を見つめる」(竜口)術を忘却した。
 特に習近平〈軍民融合〉(全て中国軍に吸い上げ)の実態に封印する極楽鳥・日本国の経済至上主義-此れに警告を発している竜口氏である。
 支那を偉大なる隣人として過去に評価(ニクソン、カーター、クリントン)大統領諸君だが、今日の米国の意識変貌は、適切と云いたい。
 「チャイナドリーム」にグッバイを言える日本政府・経済界を熱望致す為にも、氏の〈精神の遊び〉と語り──歴史随筆風にまとめた著作は、偉大な羅針盤足り得る、と解するのである。
 歴史推移の範疇で発生したアメリカの歪みと真実を述べ、大日本帝國(大東亜戰争を含む)の情況及び国際情勢。支那大陸の過去から現在まで-独善習近平体制の問題点と将来、本書は〈知識の宝庫〉である。

蓮坊公爾

宮崎正弘の国際情勢解題

イーグルとパンダは助け合い、憎しみあい、そして対立へ到った
米国は中国の何が許せないのか

 四百年の歴史パノラマを背景に中国と、アメリカ、ロシア、日本の立ち位置、関与の変貌を物語風に追った異色作だ。
 国家安全保障の専門家らしく、国防と軍備の具体的なデータからも、中国の軍事能力を客観的に評価し直している。政治を論じているのだが、歴史と文化が、軍事と掻き混ざって混沌とした全体像を描いている。
 中国海軍のアキレス腱は宮古海峡だと指摘し、また中国の空母はわが護衛艦「加賀」にも劣るシロモノと実態を抉り出す。
 ソ連時代に空母は九隻造られ、いずれも役立たずだった。現ロシア唯一の空母「クズネツォフ」は黄昏にあり、そのコピィでしかない中国空母「遼寧」と「山東」は、まもなく役立たずの廃棄物に化そうと著者は示唆する。
 そしてこう言われる。
 「アメリカは、独立前の植民地時代からほぼ四百年にわたり、一貫して極東の大国チャイナに憧れを抱いてきた」
 黒人奴隷とクーリー貿易が対比的にでてくるが、黒人奴隷が払底すると、かわりの「奴隷として」中国から労働力を輸入した。その数、およそ150万人とも言われる。
 資産を成して故郷に錦を飾ったクーリーはすくなく、大方が米国のあちこち、中米諸国、カリブ海から南米にかけても輸出され、そこで朽ち果てるか、チャイナタウンを形成して住み着いた。
 さて日本はと言えば「アメリカの親チャイナ路線に翻弄されてきた」と総括する。
 まさにその通りだろう。
 カネに目が眩んで日本の外交を曲げた田中角栄以後、日本の政治は北京に操られてきた。

 ニクソン以後のアメリカも、みごとに騙された。
 トランプ以降、そのアメリカの親中路線は劇的に変貌した。米中は「新冷戦」に突入したが、それなら日本はこのまま親中路線の舵取りを替えなくて良いのか?と訴えている。

宮崎正弘
令和四年(2022)2月1日(火曜日)通巻7204号

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