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第42回/土門拳賞受賞『満洲国の近代建築遺産』

土門拳賞受賞『満洲国の近代建築遺産』

2023年第42回 土門拳賞受賞『満洲国の近代建築遺産』

横浜正金銀行大連分行(大連、2017年)横浜正金銀行大連分行(大連、2017年)

 毎日新聞社主催の第42回土門拳賞(協賛・東京工芸大学、協力・ニコン、ニコンイメージングジャパン)選考会が先月、東京都千代田区一ツ橋の毎日新聞社で開かれ、船尾修氏(62)に決定いたしました。受賞対象となったのは小社刊・写真集『満洲国の近代建築遺産』です。審査員の皆さま、関係者の皆さまん、誠にありがとうございます。

 かつて百数十万人もの日本人が居住していた満洲国──、新京、長春、大連、旅順、奉天、洛陽、哈爾浜など、それらの土地には日本人が設計や施工に関わった数多の建造物が、風雪に耐え、政治的理由で壊されることもなく、主人は代われども、いまなお現役として使われています。これは戦前、日本人が満洲を統治していたひとつの証です。本書に収められた約四〇〇箇所におよぶそれらの建築遺産から、当時の日本人が見たであろう満洲国という夢の新天地が浮かび上がってきます。

 なお、タイトルの「満洲国」について、船尾さんはこのように語っています。

 「満洲」とは、日本の領土であった関東州などを含む広い地域を指し、本来の「満洲国」とは区別する必要があります。しかしタイトルをあえて『満洲国の近代建築遺産』としたのは、同国の成立過程に日本人が大いに関与し、日本はやがて満洲全域の統治に乗り出していったという重い歴史をいま一度ふり返りたかったからです。(解説/後記より)

 撮影にあたっては、混雑する街なかに目的の建造物があることが多いため、車を使うわけにもいかず、重い撮影機材を抱えながら、ほとんど徒歩で訪ね、また、残存する建物が中国共産党政府関連であったり軍事管理地区に指定されていたりすると近づくこともできず、それでも何とか撮影しようとウロウロしていたら守衛や人民軍兵士に怒鳴られ追い払われたこともあったそうです。

 そうした苦難のもとに撮影された三七九点の貴重な建築遺産の一点一点を、かつての「日本人が見たであろう満洲国という夢」に思いを馳せながら、追体験していただけたら幸いです。

船尾修(ふなお・おさむ)プロフィール

船尾修氏近影船尾修氏

1960年神戸市生まれ。筑波大学生物学類卒。出版社勤務の後、フリーに。アフリカ放浪後に写真表現の道へ。著書に『カミサマホトケサマ国東半島』(2017年、青冬社)、『フィリピン残留日本人』(2015年、青冬社、第25回林忠彦賞と第16回さがみはら写真賞・第1回江成常夫賞受賞)、『南アフリカ共和国(世界のともだち)』(2014年、偕成社)、『カミサマホトケサマ』(2008年、青冬社、第9回さがみはら写真新人奨励賞)、『循環と共存の森から──狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵』(2006年、新評論)、『日本人が夢見た満洲という幻影──中国東北部の建築遺構を訪ねて』(2022年、新日本出版社)、『大インダス世界への旅──チベット、インド、パキスタン、アフガニスタンを貫く大河流域を歩く』(2022年、彩流社)など多数。現在は大分県の中山間地にて無農薬で米作りをしながら家族4人で暮らしている。

図書情報

満洲国の近代建築遺産

書名:満洲国の近代建築遺産
著者:船尾修
発行:集広舎/B5変形判/上製/416頁
価格:本体8,000円+税
発売:2022年12月25日
ISBN:978-4-86735-039-3 C0072

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