集広舎の本

『黄禍』

黄禍 - カバー展開図 黄禍

タイトル:黄禍
Yellow Peril
著者:王力雄
訳者:横澤泰夫
価格:本体2700円+税
判型:A5判上製 528頁
発売予定日:2015年11月09日
ISBN 978-4-904213ー34-6 C0097

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中国内戦勃発!

それは総書記を狙う一発の凶弾から始まった──。
中国の崩壊、国外へあふれ出る膨大な難民。
世界はこの危機にどう立ち向かうのか。
中国で発禁の作家・王力雄が描く、戦慄の近未来シナリオ。

 『黄禍』の主題は、中共政権がどのような過程を経て瓦解し、それにつれて中国がどのような過程を経て崩壊するかということである。現実の進行過程は当然小説とは異なるが、専制政権は早晩瓦解する。しかも往々予想外のこととして(ソ連の解体が突然のことだったように)。今日、中国の各種の矛盾は深層で沸騰し、今まさに噴火せんとしている。まさにこのような観点から、私は、「黄禍」という事態は中国にとっても世界にとっても遠い将来のことではなく、いつでも思いもかけない時に起こりうるのだと考える。

──本書「はじめに」より

『黄禍』は、1999年に香港の雑誌『亜洲週刊』で「20世紀に最も影響を与えた中国語小説100冊」の中の1冊に選ばれる。本書は英語版・韓国語版に続く、『黄禍─新世紀版』(2008年、台湾大塊文化出版社)からの完全邦訳版。

著者略歴/王力雄(ワン・リーション、おう・りきゆう)
1953年、吉林省長春市生まれ。作家、民族問題研究者。著書に『漂流』(1988)、『黄禍』(1991)、『溶解権力』(1998)、『天葬─西藏的命運』(1998)、『ダライ・ラマとの対話』(2002)、『黄禍─新世紀版』(2008年)、『天葬』(増補改訂版、2009年)など多数、日本語訳は『私の西域、君の東トルキスタン』(集広舎、2011年)。2002年「当代漢語貢献賞」、2003年「ヘルマン・ハミット賞」、2009年「真理の光賞」などを受賞。

訳者略歴/横澤泰夫(よこさわ・やすお)
昭和13年生まれ。昭和36年東京外国語大学中国語科卒業。同年NHK入局。香港駐在特派員、国際局報道部、国際局制作センターなどを経て平成6年熊本学園大学外国語学部教授。主な著訳書に、師哲『毛沢東側近回想録』(共訳、新潮社)、戴煌『神格化と特権に抗して』『中国報道と言論の自由』(翻訳、中国書店)、章詒和『嵐を生きた中国知識人』、于建嶸『安源炭鉱実録』(翻訳、集広舎)、劉暁波『天安門事件から「08憲章」へ』(共訳、藤原書店)

 

BOOKREVIEW

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

平成27年(2015)11月12日(木曜日)通算第4724号

中国崩壊の過程をなまなましく想像してみると
独裁政権が破綻すると、中国では想定外のことがおきる

 中国では何が起きても不思議ではないが、中国人でしか発想しえない近未来のシナリオが本書では展開される。
 書き出しは新宿歌舞伎町のとある隠微な風俗店。ここで中国軍の幹部から或る人物の『暗殺』を頼まれる。いきなりの舞台が中国人の爆買いツアーのスポット、世界的に有名な歓楽街という設定だ。
 暗殺は実行に移され、重要人物は撃たれる。
 標的は誰あろう、中国共産党総書記である。
 かくして中国に内戦が勃発し、共産党体制は崩壊、国外へあふれでる難民はシリア難民なんて目じゃない。世界はこの危機にいかに立ち向かうかというシミュレーション、近未来小説である。
 かなり長い。
 作者は哲学的思想書を小説に託したのかも知れない。
 実は、この本は最初、1991年に台湾で出版され、世界で翻訳版がでた。発禁処分となった中国大陸内部でもコピィがまわし読みされた。2008年の北京五輪直後に、改訂版が上梓され、ようやく2015年に日本語版翻訳の出版にこぎ着けた。
 ともかく「中共政権がどのような過程を経て瓦解し、それにつれて中国がどのような過程を経て崩壊するかということである。現実の進行過程は当然小説とは異なるが、専制政権は早晩瓦解する。しかも往々予想外のこととして(ソ連の解体が突然のことだったように)、今日、中国の各種の矛盾は深層で沸騰し、今まさに噴火戦としている。(中略)部分的な理性が重なって全局面の非理性的な状況に到るというのは、まさに今日の人間の典型的な姿である」と作者は強調している。
 反乱万丈、奇想天外のストーリーは読んでのお楽しみ。

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