中国ネットジョーク

第01回

現代中国人民哀歌──我々はソ連様の愉快な後輩だ①

強国ジョーク⑳

現実的には

習近平が王岐山に聞いた「どうすれば中国が偉大なる復興を遂げられるだろうか?」
王岐山は答えた
「二つの道があります
現実的なのは宇宙人が降臨し、他の国をすべて滅ぼすことで
多少現実離れしているのは、我々が自力で成し遂げることです」

原文

习近平问王岐山:”中国怎么才能伟大复兴?”
王岐山回答:
“有两种可能
比较现实的是外星人光临地球,毁灭其他国家
科幻一点的是,靠我们自己完成”

強国ジョーク㉑

真実を見よ

習近平が大会で発表した
「中国はすでに全面的に貧困からの脱却を果たし、
社会全体が豊かで安定した理想的な、いわゆる小康社会を実現している」
演台の下から反逆者が言った
「俺はついさっき山村から戻ってきたが
そこの子供たちは皆ジャガイモしか食べ物が無かったぜ」
習近平は彼に取り合わず、発表を続けた
「また、GDPも8000万ドルに達しようとしている」
反逆者はまたも言った
「李克強が言ってたぜ。まだ6億人もの人間が
月収1000元もないってよ」
習近平はとうとう激怒して反逆者に言った
「同志、あちこち見て回るのはやめ、新聞をよく読むんだ!
例えば『人民日報』や『環球時報』をな!」

注釈
8000万ドル:約
1000元:約18,000円弱(2021年11月現在)
人民日報は共産党の機関紙で、環球時報は人民日報傘下のタブロイド紙

解説

2015年から中国は貧困脱却戦(脱貧攻堅戦)と名付けた貧困問題解決活動を行い、5年以内に貧困地区と貧困人口に対し根本的な問題解決を図るとしていた。
2020年11月、貴州省が同省に残った最後の貧困県がその状態を脱したとして、中国に832あったすべての貧困県が脱貧困を果たしたと発表された。
しかし、中国の貧困に対する基準が国際的な基準より低く設定されていること、この脱貧困活動の目的は国際的なアプローチに過ぎない等の批判が台湾やアメリカの報道機関などからされている。
国際連合による貧困基準は日収1.9ドル、中国の基準は日収1.3ドル(8.8元)である。
実際、貧困地域から脱却したとされる陝西省洛南県では食料問題や季節性の水不足等がいまだに存在しているという報告がある。

原文

习近平在大会上发言
“中国已经实现了全面脱贫,全面小康”
台下反贼说
“我刚刚从山村回来
那里的小孩只能吃洋芋”
习近平没有理会继续说:
“人均生产总值,接近八千万美元”
反贼又说:
“李克强说还有六亿人
月收入不到一千元
习近平大怒
“同志,你应该少出去看看,多读读报纸”
比如,《人民日报》,《环球时报》”

強国ジョーク㉒

おたより

祖国に送還される前、
壁越えのネット紅衛兵は国外に残る友人と話し合った
当局からの手紙等への検閲を防ぐため
もし何もかも順調だったら
写った人間がみんな、
立ち姿の写真を送ろう、
もし事態がまずかったら、座り姿にする
ほどなくして、ネット紅衛兵は本当に写真を送ってきた
写真の中の人間は、みんな袋詰めで横たわっていた

解説

原文では「翻墙」とある、VPN等を使用して中国のグレートファイヤーウオールを突破する行為を壁越えと訳した。

原文

在被遣送回国前
翻墙的小粉红和留在国外的朋友商定
为了提防当局的书信检察
要是一切都好的话
他就会给他们寄来照片
上面的人都是站着的,
要是不好的话,就都坐着
不久,小粉红真的来照片了
上面的人都躺在袋子里

強国ジョーク㉓

どこ?

習近平は大会で宣言した
「ファーウエイはすでに最高の性質のマイクロチップを製造している」
演台の下から李克強が聞いた。「そのマイクロチップは何処に?」
翌日、習近平はファーウエイへの表彰を発表した
演台の下から仁志強が聞いた。「李克強は何処に?」

解説

李克強は現在中国の首相であり、中国の政権ナンバー2。胡錦涛元総書記と同じ共青団の出身(ジョークでは李小強とされていたが、日本語では李克強と記した)
仁志強は2016年にSNS上で習近平の党と政府管轄のメディアはすべて共産党の宣伝と代弁に従じなければならないとする方針に対し、「人民が納めた税金を何故納税者のために使わないのか?」「人民政府は共産党の政府なのか?人民政府の金は共産党の金なのか?」と異を唱えた後、国営メディアから猛攻撃を受けた。その後インターネット上に誤った言説を流布し党の威信を傷つけたとして厳重処分を受け、SNSアカウントは凍結・封鎖された。
その後も習近平批判を行ったため、身柄を拘束、党籍は剝奪され汚職の罪で懲役18年、罰金480万元を言い渡された。現在所在および生死不明である。元企業家で実業家視点を持つ異色の存在であった。
 現実では、李と仁、口を滑らせて(?)行方不明になったのが逆であるのが何とも言えない。

原文

习近平在大会上宣布
“华为已经制造出性能最好的芯片”
台下的李小强问:”那芯片在哪里呢?”
第二天,习近平又开发布会表彰华为
台下的任大强问:”李小强在哪里呢?”

強国ジョーク㉔

感謝

ある労働者が年越しで帰省するとき
押し合いへし合いしつつやっと汽車に乗れたので
労働者は額をさすりさすり言った
「あーやっと乗れた、神様ありがとう!」
すると、乗務員が彼に言った
「同志、君はそのように言ってはならない
偉大なる習主席に感謝いたします、と言わねばならない」
労働者は「すみません、同志
俺はこの通り思想的に落ちこぼれの労働者でして
今後はあなたの言う通りに直します」と返事した
しばらくすると、労働者はまたも口を開いて聞いた
「すみません、同志よ。神様って言っちゃいけないなら
もし習がくたばった暁はなんて言えば良いんですかね?」
「うむ、その時こそこう言える
『神様ありがとう!』」

原文

一个打工人过年回家
当他终于挤上火车之后
他擦了擦他的额头
说:”终于上来了,感谢老天爷!”
乘务员说:
“同志,你不能这么说
你必须说感谢伟大的习主席”
“抱歉,同志”打工人答道,
“我就是个思想落后的打工人
我从现在开始按你说的说”
过了一会儿,他又问道:
“抱歉同志,不让说老天爷的话
如果习死亡了,那我该怎么说?”
“好吧,到那时候你就可以说:”
‘感谢老天爷’了!

強国ジョーク㉕

一連の強国ジョークは会話や用語等は分かりやすくしつつも、基本的には原文に忠実に訳すように努めております。そして、現代中国の政権批判ジョーク形式の由来はソ連時代のアネクドートであるという、パロディ的要素もあるため、ジョークの表現には現在の価値観からすれば非常に古く、差別的に映る部分も存在します。
ですが、現代中国の政権批判ジョークに流れるのは、あくまで一党独裁、強権的で人権を無視した共産党や習近平の支配体制への批判精神であり、他民族への蔑視や差別を助長したいわけではありません。
それらの経緯も踏まえて現代によみがえった中国のアネクドートとしてお読みいただければ幸いです。

残酷さにはワケがある(はず)

習近平がアフリカを訪問中
現地の食人属に捕まり、焼いて食べられることになった
習近平は彼らに聞いた
「君たちは共産主義か?」
「違う」
「個人崇拝をしているか?」
「しない」
「階級闘争があるのか?」
「全然ない」
「なら全く理解できん!君たちはそれで何故こうも残酷になれるのか!?」

解説

共産主義と訳した部分の原文は「集体主義」とあり、「集産主義」のことであるが、この集産主義という語はソ連が標榜していた共産主義を表す場合もあるため、共産主義と訳した。

原文

习近平在非洲访问时
被当地食人族抓捕,要把它烤来吃
习近平问道:
“你们是集体主义吗?”
“不是”
“你们搞个人崇拜吗?”
“不搞”
“你们有阶级斗争吗?”
“没有”
“那我真搞不懂,你们为什么着呢残忍?”

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