集広舎の本

香港 絶望のパサージュから語りの回廊へ

書影

書名:香港 絶望のパサージュから語りの回廊へ
副題:2019レジスタンスダイアリー
編者:日本語版「消えたレノンウォール」翻訳委員会
発行:集広舎/2023年4月26日
発売:2023年5月10日
判型:変形判 170 × 210mm/並製/420頁/オールカラー
価格:本体3,636円+税
ISBN:978-4-86735-036-2 C0036

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あの夏、香港の街頭を覆い尽くした「レノンウォール」。
彼らのことばを拾い集めた奇跡の一冊が、いま日本へ──。

書評

評者:福嶋亮大 / 朝⽇新聞掲載:2023年05月27日

レノンウォール──抵抗の付箋紙

 1980年、ジョン・レノンの死を悼むいくつかの歌詞がチェコのプラハにある小さな広場の壁に記された。やがてそれは多くの書付で埋め尽くされ、愛と自由と平和を訴えるプロテストの象徴として、世界各地へ飛び火する。
 香港では2014年、雨傘革命の際に登場し、2019年の逃亡犯条例改正案反対運動において、壁に付箋紙を貼るという香港スタイルのレノンウォールが100カ所以上出現し、レジスタンスによる民主化を求める非暴力デモが全市民闘争の規模へと拡大していることを示した。
 本書はその足跡を多数の写真や図版とともに記録した、英語版に次ぐ、初の邦訳版である。

タイトルについて

「語りの回廊」という語は、現代の香港において、ベンヤミンを死に追いやった「絶望のパサージュ」から、人々はいかに自らを救い出し、語りによって自らの場を紡ぎ出したかを観察するために用いた。「回廊」は、ただ通り抜けるのではなく、長くとどまって周回し、そこに文化的な意匠や重層的な語りの創出を連想させる言葉でもある。それは生と死、そして時間の一方的な流れをも超える循環的な語りの場でもある。(本書《香港「絶望のパサージュ」から「語りの回廊」へ》より)

本書が黄色である理由

香港の自由と民主を求める人々のシンボルカラーである「黄色」は、イエローリボンとして使われ始め、雨傘革命でテーマカラーとなり、二〇一九年もそれが引き継がれた。その後も体制派の「藍色」に対して、抵抗派の「黄色」は、レジスタンスを支持するレストラン、ショップ、カフェ、銀行などを示す色や冠辞に使われている。本書でもこのシンボルカラーをカバー、表紙、見返しに使用した。