中国ネットジョーク

第01回

現代中国人民哀歌──我々はソ連様の愉快な後輩だ①

編集室より

このジョーク集の出典はYoutubeにアップロードされた動画『超越苏联笑话的习近平新时代墙国笑话第一弹!』です。動画制作者の墙国蛙蛤蛤さんの許可を得て、唐山淡さんによる日本語訳と解説を掲載いたします。ちなみに墙国蛙蛤蛤というアカウント名は、意訳すると「強w国wwwだってよpgr」だそうです。日本の政治ジョークとはまた趣が異なる中華ジョークをお愉しみください。

出典について(唐山淡)
中国国内のプラットフォームであからさまに習近平や当局をあげつらうジョークを発信すれば、発信者はSNSアカウントだけでなく社会活動どころか命もアカBAN(アカウント抹消。つまり生命の抹消のこと)の危機にさらされる。
そのため真の笑い話に飢えた21世紀のソ連の後輩である四暗刻大陸の人民たちは、米帝様の支配領域(YouTube)だったり、大英帝国様と何かと噂のアイルランド発(Twitter)のSNSで、盛んに活動しているというわけだ。
いつの時代も、母国で自由にモノが言えない在野の言論人は国外にて真実を映した文学やジョークを発し続ける証左である。

強国ジョーク①

救出対象

ある一人の人民が不幸にも水に落ちた
彼は水中から大声で叫んだ「助けてくれ!」
だが岸辺のものは誰も助けに行かない
彼はまたも大声で叫んだ「共惨党(共産党を皮肉った言い回し)を打ち倒せ!」
岸辺のものはやはり誰も助けに行かない
最後に、彼はこう叫んだ「私は貧困層だ!!」
即座に、パン!と何人かの政府官僚が急いで飛び込み、
彼を助け上げ、消去した

解説

2015年より習近平の肝いりで行われている脱貧困作戦に対する当てつけジョークである。
貧困層を「消去」してあげれば、貧困は一掃されるよね!と語り、中国政府のやり口を皮肉った辛辣なジョークである。

原文

有一位人民群众不幸落到水里
他在水里振声高呼“救命啊!”
岸上没人施救
他又大喊“打到共惨党!”
岸上仍然没人施救
最后,他大喊“我是贫困人口!”
很快啊,啪得一下,几个政府官员跳入水中
将他救出,将他消灭

強国ジョーク②

暗殺者

中共の抑圧に耐えかねたウイグル人は
刺客を差し向け、習を暗殺することに決めた
刺客は国家主催の宴席で暗殺するため
宴席では
正体がバレないように
全人代の代表らとともに食事をとっていた
だが正体がバレて、捕まってしまう
刺客がSPに「どうやって見破った?!」と聞くと
SPは答えた
「お前一人だけが慶豊の豚ネギまんじゅうを食べていなかった」

解説

慶豊の肉まん話の由来は、2013年習主席が北京の庶民的な肉まん屋『慶豊まんじゅう』におしのびで行き、合計21元の質素な昼食をとったという報道キャンペーンによる。
習の妥当腐敗、汚職等追放運動のパフォーマンスである。
慶豊は、中国語ではチンフォンと発音し、これが腐敗を一掃するキャンペーンを表す『清風』と同じ発音であるため、より一層パフォーマンス性に磨きがかかった印象をもたらしている。
その後、舞台となった慶豊まんじゅう店は大勢の観光客が押し寄せ記念写真を撮るようになったという。

原文

维族人因为受不了中共压迫
决定派人刺杀习大大
刺客准备在国宴上将他刺杀
宴席上
刺客为了不暴露自己
和人大代表们一起用餐
最后,他还是被发现并制服
他询问抓捕他的保镖,怎么看出来的?
保镖答道:
就你一个人没吃猪肉大葱馅的庆丰包子

強国ジョーク③

マオタイ酒

マオタイ酒を受け取った金家の三代目デブは非常に喜び
習家の二代目デブに聞いた
「中国の人民が皆こんな良い酒が飲めるのか?」
習のデブは答えた
「人民は皆飲んでいる。全人代の代表が彼らに代わり飲み干した」

解説

マオタイ酒は中国三大銘酒の一つ。原産地は貴州茅台鎮。
2018年、習近平は128万元もする非常に高価なマオタイ酒で、訪中した金正恩を接待したことを元にしたジョーク。
128万元は2021年11月のレートでは約2280万円。
全人代とは中国の最高立法機関であり最高の権力機関である全国人民代表大会のこと。
代表と称す定員は各地方政府等から選出されその殆どが共産党幹部。人民代表と言っているが一般大衆の代表ではなく、一党独裁制度の共産党幹部や共産党の息がかかったごく少数の富豪のみが国家の立法を行ってなお「人民代表」と称されていることも皮肉っている。

金家の三代目デブは北の三代目将軍様金正恩のこと。原語では『金三デブ』と簡素に書かれていた。偉大なる習近平総書記も共産党幹部の子弟であり、太子党と称せられているため、金家の三代目デブと呼応する習家の二代目デブと訳せるような呼び名に。
二人の共通点は以下

  1. 太い
  2. 彼らの権力基盤は親から譲り受けたものであり、人々から選ばれた訳ではない
  3. 二人とも民主的な投票によって選ばれた指導者ではないため、国民を軽視し大衆の意思を軽んじて思い通りにしようとする独裁者である
  4. (この解説は訳者の独断ではなく、共産党の監視を潜り抜けネットの海に記された中国の真の愛国者たちの記述を元にしている)

原文

金三胖收到茅台后非常高兴
问习二胖:
中国人民能不能喝道这样的酒?
习二胖说:
“人民都喝过,人大代表代替他们喝的

強国ジョーク④

焦眉の急

習の旦那がお屋敷にお戻りになったとき
彭夫人ときたら元カレの閻維文とお楽しみの真っ最中
それを見た習の旦那は怒って言った
「iPhone12が発売したっていうのに、何寝てるんだ!とっとと買ってこい!」

解説

閻維文は歌手で、習近平の妻である彭麗媛の昔の同僚だが、恋人だったという噂がある。
このジョークは最高権力者をその夫人の男性関係でからかいながら、同時にアメリカを口では攻撃しているのにアメリカのブランドに弱い中国を皮肉っている。

原文

习大大回到寝宫
看见彭麻麻和阎维文睡在一起
生气的说:
“iPhon12都出了,你们怎么还躺在这里,快去买!”

強国ジョーク⑤

里帰り

習の旦那が青春を過ごした梁家河に戻ったら
足が滑って肥溜めに転げ落ちたとさ
親切な村人が彼を助けてやったけど
習の旦那は感謝しつつもこう言った
「同志よ、どうか他の者には私が肥溜めに落ちたと言わないでくれ」
村人答えて
「あなた様こそ、私が助けてしまったことは、どうぞご他言無用」
そばにいた李克強、そっと村人に耳打ちしたさ
「実は私が奴を突き落としたことも言ってはならんぞ」

解説

習近平が青春を過ごした田舎、梁家河とは習氏が16歳になる前、1969年から7年ほど下放された延安省沿川県にある村。ここで習氏は共産党に入隊し、党支部の書記を務めていた。

原文

习大大在重返梁家河的时候
脚底一滑,跌入了沼气池
好心的村民将他救出
习大大感激的说:
“同志,请你不要告诉别人,我掉到了粪坑里”
村民说:
“也请你不要告诉别人,是我把你捞起来的”
一旁的李克强对村民说:
“也请你不要告诉别人,其实我把他推下去的”

強国ジョーク⑥

糞リーダム(フリーダム)

あるアメリカ人が中国のネット紅衛兵とお喋り中に
こう言った「我々の国がどれだけ自由か
誰でもやりたいことをは、すぐできる
例えば僕もこの前なんかホワイトハウスの前で小便したが
誰も気にしやしない」
ネット紅衛兵も負けずに言った
「それがどうした。俺なんか天安門広場でうんこしたことがある!」
アメリカ人、それを聞いて「オーケー、参った
僕、実は万一を考えて周りに人がいないのを確認してから小便した」
ネット紅衛兵も白状した。「実は俺もズボンをはいたまま、うんこしたんだ…」

解説

原語で小粉紅と表されているネット上で民族主義、愛国主義に偏った発言を繰り返すネットネイティブ世代の一群を「ネット紅衛兵」と訳した。
元々はピンクちゃん、薄桃色ちゃん、といった意味で、背景色がピンクだった中国の文学サイト晋江文学城のユーザーへの呼び名であった。
その後、留学や海外移民を経験したり、VPN等を使い、中国政府が禁止しているSNS上にも現れながら現代中国の民族主義的、愛国的発言を繰り返すネットネイティブ世代の一群を指す言葉へと変わっていった。
一部では文革時代の紅衛兵ほどは「アカ」くないという意味でも、小粉紅(ピンクちゃん)と称す、という説があるが、やってることも年齢も紅衛兵とどっこいである。世界規模な分、反中国的なインフルエンサーは国籍問わず攻撃される可能性があるため、迷惑の規模だけ言えばは文革時代の比ではない。危険度から見れば、海外在住の非中国人ならば直接身体や生命を危険にさらされにくいという違いはある。
中国共産党の下部組織である共青団等に組織的に支えられ、たびたび中国政府と反目する他国の政府や組織にネットでの集団攻撃を行い、CCTVや人民日報にその活動を称賛されている。彼らがこれまで攻撃した相手は台湾の蔡英文総統のSNS、ダライ・ラマに謁見したレディー・ガガ、はたまた台湾を国家扱いした日本のVtuber赤井はあと等多岐に及ぶ。

原文

一个美国人和小粉红闲聊
美国人说:”我们的国家是如此自由
人们想干什么就干什么
比如我最近甚至在华盛顿的白宫前撒尿
而谁都不管”
小粉红说:
“这算什么,我还在天安门广场上拉过屎呢!”
美国人解释:”好吧,我承认
其实为保险起见,我观察左右没有人后,才尿”
小粉红也承认:”其实我拉屎时,没脱裤子…”

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