書名:クジラの文化 竜の文明
副題:日中比較文化論
著者:大沢 昇
価格:本体2500円+税
判型:四六判並製 312頁
発売日:2015/11/20
ISBN 978-4-904213-35-3
【内容紹介】
東アジアと西欧の文明を吸収し、クジラのように独特の進化を遂げた日本文化と、東西南北の民族と混交することで、キメラ(合成体)的な相貌をもつ中国文化──「衣食住行」など日常の暮らしから、政治制度、価値観、思考方法の相違まで幅広い分野を探求した日中文化を理解するための好著。
「あとがき」より
私は三十年近く中国語の辞典の編集に携わってきたが、その仕事の中でいろいろと教えられることがあった。まず「中国語辞典」は「漢和辞典」の現代版だから国語辞典編集部におけばよい、と考える幹部がいた。その誤解も解け、無事に外国語辞典の一つとして仕事が始まったが、中国の出版社との共同編集はある意味、互いの誤解の連続であった。(略) 言葉は「文化の窓」である。本来なら(英和辞典とか中日辞典などの)二か国語の辞書を編集するとき、言語の背後にある文化の違いを詳しく書き込む必要がある。ところが多くの語彙を載せる必要がある辞典では紙幅の関係で、背後の文化の違いは簡単に記すか、割愛せざるを得ない。こうした「文化の違い」をテーマごとにまとめたのが本書である。
【著者略歴】
大沢昇(オオサワ・ノボル) 1952年、東京都生まれ。1974~75年、シンガポールに在住してPANA通信に勤務、76年、東京外国語大学外国語学部中国語学科を卒業。小学館に入社し「週刊ポスト」編集部や外国語編集部などで働く。2013年に退社。現在は、大正大学客員教授、獨協大学国際教養学部講師、慶應義塾大学講師、中国分析・総合センター代表。 著書に『中国はどこへ──ポスト鄧小平を読む』(三一書房)、『中国の性愛テクノロジー』(青弓社)、『中国怪奇物語』全5巻(汐文社)、『現代中国──複眼で読み解くその政治・経済・文化・歴史』(新曜社)、『編集者になろう!』(青弓社)、共著に『世界の長編文学』(新曜社)他。
◇◇ 書評 BOOKREVIEW ◇◇
「写真」は古い漢語で「肖像画」を意味したなど、同じ字でも日本と中国ではニュアンスに違いがみられることが多い。中国語辞典の編集も編集してきた著者がさまざまな「違い」を実例で示す。
料理などを例に、中国文化は「火」、日本文化は「水」が象徴すると論を展開。李白の詩、松尾芭蕉の俳句から感性の違いも指摘する。
文化摩擦は日中両国の文化の「融合の苦しみ」。相互理解が進み、普遍的な「地球文明」が生まれる可能性にも言及する。
信濃毎日新聞 2016年(平成28年)1月10日(日)読書面