諸先生各位。秋が深まりました。みなさま、お元気でお過ごしのことと存じます。以下は「燕のたより」の小さなご報告です。
1.チベット女流作家のオーセルさんは、最近、四川省のチベット自治州において青年僧が自殺を図ったことで、次の詩で追悼しました。
「私の両手には何もありません。でも右手にペンを握り、左手で記憶をつかむ。この時、記憶はペンの先から表れる。さらに、行間では踏みにじられた尊厳と尽きない涙が流れる。」
オーセルさんは、国際的に栄誉あるオランダのクラウス王子基金会から「勇敢なチベット人作家」として表彰されました。彼女は中国政府がパスポートを出さないため、今回もオランダで開催される授賞式に出られません。十二月、北京のオランダ大使館で彼女のために特別に授賞式が行われます。
2.また、新たな朗報です。廖亦武さんが、ドイツで「ショル兄妹賞」を受賞しました。「ショル兄妹賞」は「独立精神、公民の自由、道徳、知識、美意識を促進し、勇気と今日の社会的責任を高める作家」に与えられます。以下のサイトをご参考にしてください。
◎ショル兄妹賞 Geschwister-Scholl-Preis 2011
廖亦武さんは劉暁波さんの盟友で、「〇八憲章」の最初の署名者です。一九八九年の天安門事件のとき「大虐殺」という詩を発表したため四年間も投獄されました。これまで、弾圧下の表現に与えられるヘルマン/ハメット賞を二度も受賞しています。今年の六月末に雲南省からベトナム、ポーランドを経て、ドイツに事実上の亡命となりました。彼の著作はドイツ語版(フィッシャー)、英語版(ランダムハウス)など次々と出版されています。なお、日本語では『中国低層訪談録・インタビューどん底の世界』(集広舎、二〇〇八年)が劉燕子訳・解説で出版されています。これは、三〇数名の「低層」の人々の生の声を伝えています。
「今日の言語世界は、権力、財力、暴力により侵略され、汚染されています。しかし、このような世界を支える最下層の民衆が発する生き生きとして強靭で真実の言葉は、わたしたちをおおう暗闇の世界を照らす明かりです。それは最下層のものだからこそ、最も確かな立脚点であり、原点です」(「あとがき」より)。
授賞式は十一月にミュンヘンで行われます。その時、二〇〇九年のノーベル文学賞受賞者のヘルタ・ミュラー女史がご挨拶する予定です。以下のコラムをご参考にしてください。
◎投降しろ・否! 十数回も出国を阻止されてもなお試みる廖亦武
3.このように、言論の自由、人権擁護、民主主義のために努力している人を顕彰し、励ますような賞を、日本でも設立してもらいたいです。そして、このような人たちの来日や講演も実現したいです。たとえ、中国政府が出国を阻止しても、国外が注目しているという姿勢を見せることができます。今年の3月には、王力雄氏の来日・講演が実現できました。これは一つの例です。このような長文で、最後までお読み下さりありがとうございます。敬具。劉燕子
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