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ネパールおよびチベットをめぐる最新の状況

「ジェネレーションZ」の抗議活動を受けて悪化するネパール在住チベット人の状況

 ネパールで最近、ジェネレーションZと呼ばれる若い世代が主導する全国的な抗議活動が起きている。そうした中、ネパールのチベット人コミュニティが、反ネパール、反中国活動に関与しているという根拠のない非難の標的となっている。偽情報と政治的操作に煽られたこれらの非難は、ネパールの内政に対する中国の影響力の拡大を反映している。その結果生じた弾圧により、ネパールのチベット人は迫害や恣意的逮捕、名誉毀損という深刻な危険にさらされ、ネパール在住のチベット人コミュニティ、特に合法的在留資格がない人の安全や保安の脆弱性が高まっている。また、ネパールにおけるCTA(中央チベット政権)の組織と活動の、長期的な持続可能性と存続可能性に対する懸念も高まっている。

経緯1.「TOB」グループの出現と当初の主張

 ジェネレーションZの抗議活動に続き、若いデモ参加者が「TOB」という頭文字が書かれたTシャツを着ている写真がインターネット上で拡散し、論争を巻き起こした。メンバーのスレンドラ・グルン氏は、TOBは「The Original Brothers(オリジナル・ブラザーズ)」の略称で、以前は「Tibetan Original Blood(チベット・オリジナル・ブラッド)」という名称を使用していた、どの政治団体にも属していない多民族のバイクグループであると説明した。メンバーのテンジン・ダワ・ラマ氏が以前の名称が入ったTシャツを着ている写真が公開され、監視が強化された。グルン氏は、グループは分離主義運動とは一切関係がなく、メンバーは時折、ネパールの市民として、祖先の遺産を反映した服装を身に着けていると主張した。こうした説明にもかかわらず、ネパールのソーシャルメディアユーザーは、TOBグループと、より広範囲に渡るチベット難民コミュニティの両方が、ネパールの国益に反する分離主義的かつ反中国的な活動を行っていると非難している。

経緯2. メディアによる偽情報と中国の影響

 ネパールのメディアや個々のソーシャルメディアプラットフォームは、特に知られているのが親中的な「Jama Aastha オンライン」であるが、未確認の中傷的な報道を流し、その抗議活動にチベット人が関わっていると主張している。こうしたキャンペーンはダライ・ラマ法王やチベット人の高位聖職者、官僚への個人攻撃にまで発展しているが、カトマンズにいる中国政府関係者の影響を受けていることは明らかであり、おそらくは中国国内の政府機関の支援も受けていると思われる。偽ニュースや偽情報の拡散が、ネパールでは少数民族であるチベット人コミュニティに対する憎悪と敵意を煽っている。チベット難民の国外追放を求めるコメントや、コミュニティへの殺害予告を含むソーシャルメディアのコメントがオンラインで広まり、不安定な立場に置かれているネパール国内のチベット難民の安全が一層脅かされている。さらに、チベット系ネパール人も標的にされており、彼らの市民権の正当性が疑問視されたり、法的文書を偽造し、賄賂を渡して市民権を取得したと非難されたりしている。

経緯3. ダライ・ラマ法王の代表やチベット亡命議会の議員を含む、チベットの主要人物への攻撃

 2025年10月19日、「Jana Aastha オンライン」は、ネパールのチベット難民福祉事務所(チベット事務所)の代表ツェプリ・ロポン・トゥルク・ンガワン・チョクドゥプ氏が、ネパール国籍を保有しているが、その有効性が疑問視されているという記事を掲載した。ニュースではチョクドゥプ氏のネパールのパスポートの真正性に加え、渡航歴も取り上げられ、抗議活動への関与の可能性が示唆された。こうした主張は、ネパールのポカラのロドリック・チャンパリン・チベット人居住地に住んでいたことがあり、現在はカリフォルニア在住のオンライン・コメンテーターであり、チベット系YouTuberでもあるタシ・ドルジェ氏によっても繰り返された。彼は、新たに任命されたカトマンズ地区警察署長SSPラメシュ・タパ氏に、ネパールのラジンパットにあるチベット事務所に連絡するよう促した。チョクドゥプ代表の市民権と書類による証明は既に確認されており、何の問題もないとされている。これらの告発が代表の正式な任命と同時期に行われたことは、チベット人の代表を弱体化させようとする政治的動機に基づく試みであることを示唆している。アンナプルナ・ポスト紙とJana Aastha紙は以前、代表の任命を嘲笑し、ネパールにおけるチベット人の活動を促進するために米国によって訓練を受けたと報じていた。この時、ンガワン・チョクドゥプ氏の国籍問題には言及されておらず、これは最近の告発が捏造されたものであることを物語っている。

経緯4. チベット事務所による予防措置

 カシャグ(内閣)とDIIRの指示を受け、代表は書面と口頭で勧告を行い、すべてのチベット人に対し、公衆および個人の安全と福祉に注意を払い、政治的混乱の波に巻き込まれないよう注意を徹底することを要請した。チベット事務所の重要文書は保護され、厳重な警戒体制の下で行政活動が継続された。脅威が高まったため、代表は10月19日にネパール国境地域に一時避難し、その後、信頼できる現地関係者の助言に基づき、10月22日にインドに避難した。これは、虚偽の告発による逮捕や迫害のリスクが懸念され、また、ネパールのCTA事務所の存続が危ぶまれたためである。

脅迫キャンペーンの激化

経緯5. 継続する偽情報とプライバシーの侵害

 「Jana Aastha オンライン」は、チベット亡命議会の議員セルタ・タシ・ドンドゥプ氏がネパールの市民権を不法に取得し、「反ネパール」活動を行っていると非難する虚偽の告発を掲載し、さらに、ラザ・ソナム・ノルブ議員がインド国籍の人であるとも主張している。また、2人のチベット人の、秘匿されるべきパスポート番号と有権者登録IDも公開した。こうした報道はプライバシー権の侵害であり、個人情報の悪用を招く行為である。このため、2人ともネパールからインドへ逃れざるを得なかった。
「Jana Aastha」の報道は、TOBグループが反中国活動を行っているという虚偽の話を広め、証拠が無いにも関わらず、TOBメンバーのテンジン・ダワ・ラマ氏が法的文書の詳細を偽造して、ネパール国籍を取得したことが明らかになったと主張している。だが、彼と彼の両親はネパール国民のタマン族であり、チベット人コミュニティや自由チベット運動とは何の関係もないと言われている。

経緯6. 監視と嫌がらせ

 カトマンズのチベット難民福祉事務所(チベット事務所)付近と、ネパール在住のチベット亡命議会の議員2名の自宅付近において、ネパールの私服警察官と情報部員が厳重な監視と尋問を行っているという信頼できる報告がある。これらの活動が、ネパール当局に対する中国の影響力と圧力が存在することを示唆しているのは明らかである。これはチベット人コミュニティに対する制限や脅迫、沈黙させるための行動を強めるものである。

経緯7. 寺院および宗教施設への誹謗中傷

 一部の無政府主義者や個人は、宗教的偏見や公平性の欠如に駆り立てられ、様々なチベット仏教寺院や宗教施設に対して、不正行為をしているという虚偽の告発を行っている。彼らは、チベット仏教寺院がネパールの安全保障を脅かしているという虚偽の、誤解を招くような噂を広め、寺院内に多数の武器が存在する可能性があると主張し、捜査するよう求めている。これを受けて10月28日、ネパール仏教連盟(ロポン・ペマ・ドルジェ・タマン事務局長)はこうした噂を非難し、僧院の真の目的と機能に違う、事実無根の告発を非難するプレス声明を出した。事務局長は、こうした悪意のある証明されていない発言は、宗教的寛容と社会の調和、国家の統一を損なうものであると述べ、メディアや市民社会、国民に対し、検証済みの情報のみを発信し、誤解を招くような行動を直ちに止めるよう強く求めた。

経緯8.

 最近、国王による統治とネパールのヒンドゥー教国家への復帰を支持しているらしい、自称ネパール人政治家、ドゥルガ・プラサイ氏がニュースの中で、新政府樹立を求める全国的な抗議活動の実施を主張している。さらに、チベットに関する偽情報を拡散し、誤解を招くような不敬な文脈で、ダライ・ラマ法王の名を頻繁に引用している。ネパールのメディアやソーシャルプラットフォーム上の最近の議論で、こうした行為を以前にも増して頻繁に目にするようになった。

分析

 ジェネレーションZの抗議活動が始まってからというもの、「Jana Aastha」などのメディアやソーシャルメディアユーザーは、検証可能な証拠が無いにも関わらず、チベット系の人々に対する深刻な主張を展開し、ネパールのチベット人コミュニティを不当に中傷し、人々を不安に陥れている。こうした一連の出来事が、チベット人をネパールの内政不安定化の扇動者として描き、ダライ・ラマ法王を中傷し、非難しようとする試みによるものであることは明らかである。これらの非難は事実と異なり、法的根拠も欠いている。チベット人のアイデンティティを抑圧し、地域の言説に影響を与えるために中国が継続して行っている行動と密接に関連しているのである。ネパールが「一つの中国政策」を強く支持していることがこうした行動を助長しており、さらに、合法的に国内に居住しているチベット人の市民権に対する恣意的な法執行と侵害につながっている。ネパール暫定政府が、ネパールのチベット人コミュニティに対する偽情報を抑制せず、このコミュニティの安全と保安を確保するための措置を講じていないように見えるのは残念なことである。

 こうした状況は、ネパールのチベット人コミュニティの安全と尊厳、自由に脅威が差し迫っていることを示しており、これは、外国の影響を受けた国家主導の差別の、危険な前例となる恐れがある。

提言

  1. 国際的アドボカシー:各国政府と人権団体、パートナー国がネパール政府に対し、チベット人に対する根拠のない非難を止め、国際法に則ってチベット人を確実に保護するよう、緊急に要請することを求める。
  2. 外交的関与:ネパールに対し、内政の運営において中立を維持し、外部からの政治的圧力に抵抗するよう促す。
  3. メディアの説明責任:ネパール政府当局と報道評議会に対し、偽情報キャンペーンを抑制し、標的にされた個人やコミュニティを危険にさらす、虚偽の情報を拡散する者の責任を追及するよう強く求める。
  4. 人権の監視:恣意的な拘禁、名誉毀損、見張りなどを含む、チベット人に対する侵害を監視し、報告する、独立した監視員機関を設置することを要請する。
  5. 保護と対話:事態が一層深刻になることを防ぐために、ネパール政府とチベット事務所、関係する国際機関どうしの開かれたコミュニケーションチャンネルを設けることを提唱する。

結論

 ネパールにおいてチベット人に対する攻撃が続いていることは、個人の権利の侵害であるだけでなく、ネパールの民主的で独立した制度がより広範に侵食されることであるともいえる。中国が影響を及ぼし、推進されている組織的な偽情報と脅迫のキャンペーンに対し、国際社会は毅然とした態度で対応しなければならない。

 ネパール政府に対し、政治的圧力よりも真実を優先し、チベット人への迫害を終わらせ、国内の正義と安定を取り戻すよう強く求める必要がある。

2025年12月04日

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