艾未未映像作品

第1回/アイ・ウェイウェイ映像作品「傻伯夷」

▲艾未未「傻伯夷」シャーボーイー[日本語字幕 HD]

小社刊『艾未未読本』の編著者・牧陽一氏のご協力で、艾未未の映像作品(日本語字幕版)を数回にわたって紹介します。

 

傻伯夷(シャーボーイー)

 二〇一三年五月二十二日、日本時間十一時、艾未未(アイ・ウェイウェイ)のアルバム《神曲》の一曲「傻伯夷(イカレタま●こ)」が Youtubu で公開された。
 二〇一一年、八十一日間の獄中、監視はいつも艾未未に歌を歌わせたが、彼には軍歌しか歌えず、いつもばつが悪い思いをした。それで釈放されたら音楽関係の事をしようと決心したのだという。また《神曲》という題はツイッター上でフォロアーが艾未未のことを艾婶(艾神と同音)呼ぶからだという。傻伯夷の発音は shaboyi、実はこれは切音(二文字の子音と母音を組み合わせる)で、bo の b と yi の i を合わせて bi屄(女性器)の意味になり、傻屄(イカレタま●こ)となる。

 ここに現れた「菊花开遍原野」の菊の花は、先に述べた二〇一三年に入って『南方週末』が報道規制を受けたことに対して、多くの青年が「每一朵菊花都绽放力量(ひとつの菊の花にも花開く力がある)」というプラカードと菊の花を持って抗議した事を思い起こせば、自由を求める大衆の象徴と言えるだろう。
 この荒唐無稽で汚い罵り言葉にあふれた詩を解釈するなら、暴力的な強姦魔である政権に対して、入獄も経験し落ちるところまで落ちた自分は何も怖くはない、そんなに強姦したければ強姦するがいい、と挑発しているように思われる。
 そして菊の花に庶民への期待が込められているのではないか。映像では艾未未の獄中の様子が再現されている。これは現在展示されている第五十五回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展の関連企画である、艾未未の個展で発表されたジオラマの獄中の姿と同様に、「監視するものを監視するという権力の逆転を意味するだろう。また最後の女装した艾未未の姿は先に指摘した「強姦したければ強姦するがいい」という姿勢の表れだろうし、葉海燕と同じメッセージ「校長先生、Hしたいなら私を呼んで。小学生を放して」と身体に書いたユーモアにも通じるだろう。

牧 陽一

第2回/アイ・ウェイウェイ映像作品『老媽蹄花』
第3回/アイ・ウェイウェイ映像作品「朝陽公園」
第4回/アイ・ウェイウェイ映像作品「明日を返せ」

◎参考:映画『アイ・ウェイウェイは謝らない』公式サイト(2013年11月30日公開)
◎参考:ARTiT 連載/艾未未のことば – 牧陽一