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『マオイズム革命:二〇世紀の中国と世界』出版記念シンポジウム

書名:マオイズム(毛沢東主義)革命
副題:二〇世紀の中国と世界
著者:程 映虹
翻訳:劉 燕子
発行:集広舎(2021年09月01日)
判型:A5判/上製/519ページ
価格:4,500円+税
ISBN:978-4-86735-018-8 C1022
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サロン「燕のたより」のご案内

『マオイズム革命:二〇世紀の中国と世界』出版記念シンポジウム
日時:2021年10月31日
   日本時間………………………09:30-11:30
   ニューヨーク…………………20:30-
   カリフォルニア………………17:30-

使用言語:中国語と日本語
   逐次通訳は本書の訳者の一人の和泉ひとみ氏(文学博士)

プログラム(日本時間)

開会の挨拶(劉燕子)…………………09:30-09:40
程映虹氏講演……………………………09:40-10:20
宋永毅氏コメント………………………10:20-10:40
福岡愛子氏コメント……………………10:40-11:00

休憩(10分)

深尾葉子氏コメント……………………11:10-11:30
胡平氏コメント…………………………11:30-11:50
ディスカッション………………………11:50-12:20
閉会の挨拶(辻康吾氏)………………12:20-

(司会進行:劉燕子)

パネリスト

程映虹氏:中国社会科学院で修士号を取得し、蘇州大学で教鞭を執り、1994年に渡米。ノースイースタン大学で博士号(歴史学)を取得し、現在デラウェア大学教授。本書の他に中国語と英語の著書や論文が多数。「歴史を共産主義の呪縛から解放(disenchantment)し、復元する者」(何清漣)と呼ばれる。

宋永毅氏:文革期、武闘に反対したため五年間投獄。獄中で自覚的な読書により「イズム」から抜け出し、その体制と思想に疑義が生じた。77年に上海師範大学に入学し、81年に卒業。89年にアメリカに留学し、コロラド大学とインディアナ大学で修士号を取得(文学と図書館学)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校図書館研究員。著書に『文化大革命とその異端思想』など多数。日本語版は『毛沢東の文革大虐殺』。「文革という暗黒の時代の真相を発掘しようと努力する誠実な研究者」(マクファーカー)と呼ばれる。

辻康吾氏:毎日新聞北京支局長、東海大学教授、獨協大学教授を経て現代中国資料研究会代表。第五回アジア太平洋賞大賞を受賞した『廬山会議』を監修するなど著書・訳書多数。

福岡愛子氏:東京大学大学院で博士号(社会学)を取得。著書に『文化大革命の記憶と忘却:回想録の出版にみる記憶の個人化と共同化』、『日本人の文革認識:歴史的転換をめぐる「翻身」』などがある。

深尾葉子氏:大阪大学教授、文学博士。著書に『黄砂の越境マネジメント:黄土・植林・援助を問いなおす』、『魂の脱植民地化とは何か:家族史からマオイズムを語る』などがある。

胡平氏:北京大学で修士号(哲学)を取得。1979年、「民主の壁」運動に参加し、87年にハーバード大学博士課程に留学。『北京之春』主筆・編集長。日本語訳に『言論の自由と中国の民主』がある。

『マオイズム革命:二〇世紀の中国と世界』について

 本書は米国デラウェア州立大学歴史学科の程映虹教授の『毛主義革命:二十世紀与世界(Maoist Revolution: China and the World in 20th Century)』(田園書屋出版、香港、二〇〇八年)をベースに、著者本人が日本語版のために最新の研究を取り入れて大幅に加筆修正したものの日本語訳である。

 程氏は毛沢東時代における革命の輸出と国際共産主義運動をマクロ的およびミクロ的な視座から考察し、整理し、中国共産党政府は建国以来一貫してマオイズムと中国革命モデルを世界各国に輸出してきたことを明らかにした。世界革命の主導権を狙い、中国は早くも一九五六年のハンガリー事件の勃発直後から東欧諸国の政治に介入した。同時にソ連の武力鎮圧に声高く反対しながら裏では軍事侵攻を要請していた。さらに毛沢東は東欧の政変が自国に波及しないよう“陽謀”の反右派闘争を発動した。

 文革では「プロレタリア階級は正に自分自身を解放することにより全人類を解放する」とのスローガンで革命輸出=内政干渉を正当化し、近隣の東南アジア各国の反政府ゲリラを支援し、さらにアフリカやラテン・アメリカにも「援助の手」を差し伸べた。それは開発途上国と先進資本主義国という構図において「農村から都市を包囲する」というマオイズムの世界的な展開であった。

 しかしこれは世界的規模で問題を引き起こした。各国に固有の歴史的背景、人種、民族、文化、宗教、慣習、制度などがあるめ形態は様々だが、共通性が見出せる。それは社会秩序、伝統的な価値観、倫理・道徳、平穏な生活の破壊である。これらを見渡すと国内での「文化大革命」も、これと呼応した世界革命も人類文明の破壊以外の何ものでもなかったと言っても過言ではない。

 その最たるものはカンボジアの「キリングフィールド」である。他方、マラヤ共産党は政権を奪取できなかったが、その指導者の一人で実際に革命輸出に従事した余柱業は「勝利を収めなかったことは、マラヤの幸運だった」と述懐した。勝利したらマラヤでも「キリングフィールド」が起き得たからである。

 本書の現代的意義についていえば、二〇〇九年、習近平はメキシコで「中国は革命を輸出しません」と述べたが、その信頼性の検討にとって重要である。しかも、習体制で文革の再発が鮮明になっており、なおさらである。

 また日本の中国研究を振り返る上でも参考になる(特に第九章「西側知識人によるマオイズム革命への傾倒」及び巻末の「証言」や「補論」等)。日本では文革研究が数多いが、世界的な視角からアプローチした類書は見当たらないからである。

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