中国ネットジョーク

第03回

現代中国人民哀歌──我々はソ連様の愉快な後輩だ③

⑥『危険思想』

習近平総書記は人々が実際のところ彼をどう評価しているのか知りたくなり、変装して、お忍びで街に繰り出すと、通りがかった人に聞いてみた。
「すみません、お伺いしたいんですが、習総書記をどう思います?」
すると相手は習をひとけの無い暗い路地に引っばりこんで、誰にも聞かれていないのを確かめた上、小声で耳打ちした「私は…習近平支持なんだ!」

原文

习近平总书记想知道人民是如何看待他的,所以他化妆微服私访。他在大街上问一个人:“打搅一下,请问您觉得习总书记怎么样?” 这个人把他引到一条暗巷,确认四下无人,没有其他人能听见他说话之后,他贴着总书记的耳朵小声说:“我支持习近平!”

⑦『定型文』

質問:鶏と卵、どちらが先に存在したのか?
答え:卵がいつからあるのかは分からないが、鶏は習近平総書記の登場があってこそ存在できるのだ。

解説

習氏アゲ定型文ジョークである。そう、世は習世記。習総書記が創生された新時代を我々は生きて…生かされて…生きざるを…得ない!息も絶え絶えに。

原文

问:鸡和蛋哪个先有? 答:什么时候有蛋我不知道,但鸡是在习近平总书记之后才有的。

⑧『核心を衝く』

7年の懲役刑を処された航空力学専門家の某氏に、薄熙来が質問した。
「懲役の理由は?」
「戦闘機の故障の原因を調査時、『エンジンの“中央”がダメだ』と言ったら、7年の刑になったんです。」

解説

「中央」は原文では「核心」。本来は中心という意味もあるが、この核心という単語は中国共産党において特別に重要で中心的な存在を指すときにも冠される。例えば、核心的リーダーと言えば毛沢東、鄧小平、江沢民、習近平という悪夢の四人組である。ゆえに含みを持たせられる「中央」と訳した。
薄熙来は中国の政治家。胡錦涛・温家宝時代に汚職事件を起こし失脚した(権力闘争の敗北の結果と言われている)。その後、贈賄・汚職等の罪により無期懲役となる。2017年、肝臓がんが発見されたが許可を得て治療を受けたと伝えられている。

原文

某航空动力学专家被判刑7年。 薄熙来问道:“你是因为什么被判的?” 动力学专家说:“在诊断战斗机故障的时候,我说了一句“发动机核心坏了”,就被判了7年。”

⑨『ペンは剣よりも…再び』

始皇帝、徽宗、李鴻章が一緒に閲兵式を観覧した。
始皇帝「もし朕にかような陸軍あらば、陳勝の小僧など反逆の企てもできなかったものを」
徽宗「もし朕にかような戦艦あらば、遼なぞ朕が滅ぼしたもうものを」
李鴻章「それがなんだ。もし我が手に『環球時報』あらば、中国全土が私が署名した『下関条約』を祝っただろう」

解説

短いジョークだが、登場人物全員、中国史における立ち位置からネタになっている。
簡単に解説すると始皇帝、徽宗、李鴻章は全員、中国の歴史からすると暴君だったり、亡国の皇帝や政治家で、国家や民衆の敵である。そんな輩のうち最悪の国賊でも、共産党機関紙タブロイド『環球時報』の手にかかれば、偉人として、全国民から、やんややんやの大喝采を受けられる人物になれる、というジョーク。

以下、李鴻章をメインにやや長い解説になる。
まず秦の始皇帝の悪評は焚書坑儒が代表的だろう。史上初の皇帝だというのに暴君皇帝第一号で、しかも帝国は二代目で滅亡した。陳勝は始皇帝の死後、秦に反乱を起こし、その影響によって各地で反乱が相次いで秦の滅亡につながった。陳勝自身は反乱後部下に殺された。尤も、現在、焚書坑儒は後世の創作という説もあり、史上初めて中国の統一を果たした始皇帝の業績は再評価の動きがある。
徽宗は北宋最後の皇帝である。芸術面では秀でていたが、趣味に耽溺して国庫を浪費し、金の侵攻を受けて北宋を滅亡に導いた。北宋の滅亡である靖康の変では金軍に皇后や公主を含む多数の貴人女性を連れ去られ娼婦に堕とされるという国辱が記録されている。
李鴻章は大清帝国時代の政治家で、下関条約締結時の清側の代表者。下関条約は1895年(明治28/光緒21年)に日清戦争での日本の戦勝後、当時の日本(大日本帝国)と大清帝国の間で締結された講和条約だが、その内容は清の属国であった朝鮮の独立承認、遼東半島と澎湖島及び台湾の割譲、不平等条約である日清通商航海条約の新たな締結など清国にとって国辱的なものだった。
なお、調印後いわゆる三国干渉により遼東半島は清に返還されたが、李氏朝鮮への独立承認により、清は数百年に及ぶ宗主国の地位を失った。また、この朝鮮の独立こそ日韓併合への布石である。台湾の日本による統治時代もこの下関条約から始まり、この二地域への日本による統治は第二次世界大戦で日本が敗北するまで続いた。
現在、朝鮮半島は北朝鮮と韓国という独立した二国であり、台湾は中国の圧力により国家承認を得られていないが、明らかに自治独立した別の国体を持つ国家的な存在である。
中国大陸に樹立された政権はつまり、下関条約によって現在に至るまで、歴史的な属国、領土であった朝鮮半島と台湾を失い、失い続けていると解釈もできる。と、考えると李鴻章は国辱の使者として扱われても自然である。

今回は、ネットジョーク集第2回でも登場した小見出し『ペンは剣よりも…』だが、前回のジョークの主人公、愉快なタブロイド機関紙『環球時報』のフリスビー胡氏はジョーク記事掲載直後2021年12月16日に編集長引退を表明した。世は生々流転である…が、胡氏は引き続き同紙の顧問を担うとのことで、やはり世は流れても共産党ジョークは永遠かもしれない。

原文

秦始皇、宋徽宗、李鸿章一起观看阅兵式。 秦始皇说:“如果我有这些陆军,陈胜那小子根本不敢造反。” 宋徽宗说:“如果我有这些舰船,辽国早就被我灭了。” 李鸿章说:“这算什么。我要是有《环球时报》,全中国都会庆祝我签了《马关条约》。”

⑩『大きな違い』

質問:習近平総書記と犬の違いは?
答え:犬は発狂しなきゃ人を噛まない

原文

问:“习近平总书记与狗有什么区别?” 答:“狗只在发疯时才咬人。”

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