コラム
清国に手を差し伸べたリンカーン

清国に手を差し伸べたリンカーン

合衆国の歴代大統領の中で人々に最も敬愛されているのは、第16代大統領アブラハム・リンカーンだ。当時、辺境(フロンティア)と呼ばれていたケッタッキー州の貧しい開拓農家の家庭に生まれ、苦学して弁護士となったリンカーンは1854年、奴隷制の拡大反対を党是とする共和党創設に参加。分離独立を宣言した南部十一州との戦い、「アメリカ市民戦争」という建国以来最大の国家分裂の危機の中で大統領に就任し… [全文を読む]
わたしのミッドライフクライシス──翻訳という仕事

わたしのミッドライフクライシス──翻訳という仕事

40歳を過ぎてフリーランス産業翻訳者になった。それは金融業界を離れたわたしの後半生のライフスタイルに合った仕事に思えた。現実問題としてそれは自分のスキルと社会のニーズが合致し、継続的に依頼が来た唯一の「プロ仕事」だったともいえる。翻訳は自宅にパソコンとネットさえあればできる。初期投資はほとんどない。基本、どこにいてもできる。その代わり生産性は低い。収入は前職から正味10分の1になった… [全文を読む]
カタルーニャにおける協同組合の伝統

カタルーニャにおける協同組合の伝統

4月5日(金)から7日(日)にかけて、スペイン・カタルーニャ州の州都バルセロナ市内で、来年開催される予定の変革型経済世界社会フォーラムに向けた準備会議が開催されました。準備会議とはいえ、48か国から350名が参加するという大規模なもので、有機農業/食糧主権、フェミニスト経済、コモンズと社会的連帯経済の4分野を取り上げ、数万人単位の来場が見込まれる来年5月の本会議に向けた議論が行われました… [全文を読む]
米建国神話の明暗とクーリー

米建国神話の明暗とクーリー

多様性を尊重する「移民大国」をアイデンティテイとして自負してきたアメリカは、共和党のドナルド・トランプが大統領に就任して以来国論が真二つに分断され、トランプは最近、憎悪を込めた口調で「もう移民はいらない」とまで広言している。この大統領には、白人至上主義の陰が色濃く付きまとう。徳川幕府がヨーロッパ船の来航を平戸と長崎に制限した同じころの1620年11月、北米東海岸のコッド岬に3本マストの商船「メイフラワー号」が到着した。イギリス南西部のプリマスを出港して大西洋横断の65日間の航海だ… [全文を読む]
すごい人の時代

すごい人の時代

世の中にはすごい人がいる。たとえば、桐島かれんさん。圧倒的な美貌、センスの良い服、旅行、インテリア、食事。円満で幸福な家庭と優雅な日常。それらを商品化し、40代後半で本格的に社会での活動を再開。「ハウスオブロータス」というライフスタイル・ブランドを育てた。今、ハウスオブロータスは青山の洋館風の路面店をはじめ、全国で6店舗を展開している。最初、海外で買い付けた安価な雑貨中心だった品揃えの中心は、徐々にブランド仕様のデザイン品や高単価の… [全文を読む]
資本主義と自由競争の違い

資本主義と自由競争の違い

さて今回は、ある意味で経済における根本的な問いかけをしたいと思います。私たちは資本主義という単語をよく使う割には、その本来の意味を踏まえていないことが少なくありません。ですので今回は、資本主義が何か再定義したうえで、その構造上の問題を検討してみることにしましょう。よく資本主義を単なる金儲けと誤解する人がいますが、これは違います。確かにアリストテレスが「政治学」で家庭の経営(現在でいうところの経済学・家政学)と金儲けの技術(現在でいうところの… [全文を読む]
クーリーはなぜ米国に来たのか

クーリーはなぜ米国に来たのか

ハリウッド映画『シャンハイ・ヌーン』(2000年作品)は、香港出身のジャッキーチェンがテキサス出身のオーウェン・ウィルソンと共演した西部劇アクション映画だ。清王朝の王女が誘拐され、近衛兵のジャッキーがカリフォルニア州の東隣り、ネヴァダ州の州都カーソン・シティ目指して身代金を運び、王女救出を目指すという荒唐無稽な筋立ての映画である。間抜けでお人よしの列車強盗を演じるウィルソンとジャッキーのやり取り… [全文を読む]
シンガポール讃④──相続税がない世界

シンガポール讃④──相続税がない世界

1月に訪れたシンガポール。ビジネスと商業の中心街のエスプラナードで久しぶりに現地の女友達のケイト(中華系、仮名)とペナン料理バイキングを食べた。よもやま話のなかで、彼女の父親が長寿を全うして亡くなったという話になった。ケイトは9人兄弟の末っ子だ。日本の相続は長子相続の伝統に兄弟姉妹平等の戦後民法が覆いかぶさり複雑だ。一方、中国にはもともと長男が家督を継ぐという考えがなく、兄弟の均等相続の… [全文を読む]
ベルナルド・リエター氏を偲んで

ベルナルド・リエター氏を偲んで

今回は、残念ながら訃報をお届けしなければなりません。補完通貨(地域通貨)の分野で世界の第一人者であり、来日経験も豊富で世界各地で講演を行っており、著書のうち2冊が邦訳されるほどだったベルギー出身のベルナルド・リエター氏が、2月4日にドイツで亡くなられました(7日に77歳の誕生日を迎えるところだった)。個人的に私が故人にかなりお世話になっていたこともあり、今回は通貨制度の改革を通じてより持続可能な… [全文を読む]
シンガポール讃③ ──欧米コネクションという縦糸

シンガポール讃③ ──欧米コネクションという縦糸

シンガポールは欧米文化の成分が濃い。19世紀に作られた植民地建築は今もシンガポールのランドマークだし、島内にはエクスパットといわれる富裕な欧米人が今も多く住んでいる。港町らしいレトロでハイカラな空気感は横浜や神戸に通じるものがある。とはいえ、シンガポールの欧米コネクションは横浜や神戸より、さらに古く、深く、太い。シンガポールやマレーシアでは昔から白人は「アンモー(Ang Mo、紅い毛の人)」と呼ばれ… [全文を読む]
シンガポール讃② ──世の趨勢に従え!感傷を捨てよ!

シンガポール讃② ──世の趨勢に従え!感傷を捨てよ!

一昨年、91歳で大往生を遂げたわたしの義父は商社マンだった。日本が独立を回復する1年前の1950年。戦後一番乗り、弱冠25歳でGHQの許可を得て東南アジアに渡った。シンガポール川の河口、ボートキーに並ぶ華僑のショップハウスをドブ板営業して松坂木綿を売り、外貨を獲得したという。60年近くの時を経てシンガポールを再訪した義父はシンガポール川河畔に立ち尽くし、つぶやいた… [全文を読む]
米開拓農民のイノヴェーション

米開拓農民のイノヴェーション

16世紀のフランドル地方の画家ピーテル・ブリューゲルに「バベルの塔」という大作がある。旧約聖書の「創世記」を題材に、人類がレンガとアスファルトで天に届く塔を建設する様子を描いた作品だ。七層、八層と建築が進む巨大な塔が、縦114センチ、横155センチの画面中央に圧倒的迫力でそびえ立つ。手前に塔を発注したニムロデ王をやや大きめに描いている他は、材木を運ぶ筏、巻き上げ機でレンガを上げる人夫たち… [全文を読む]
社会的連帯経済は右か左か?

社会的連帯経済は右か左か?

さて今回は、一昨年までの連載で取り上げてきた社会的連帯経済が、右と左のどちらに属するのかについて考えてみたいと思います。意外に思われるかもしれませんが、どの勢力が右翼でどの勢力が左翼かは、時代や国により異なっています。たとえばフランス革命直後は、できるだけ穏健かつゆっくり社会改革を進めようとするジロンド派が右派である一方、革命前の貴族やカトリック教会による支配に反対し、市民社会による統治を徹底しようと考えたジャコバン派が… [全文を読む]
シンガポール讃① どんな言葉並べても君を讃えるには足りない

シンガポール讃① どんな言葉並べても君を讃えるには足りない

国に愛おしさを感じるとは一体、どういうことだろう。それも自分の国ではなく他人の国に。若くて元気な熱帯の都市国家、シンガポール。日本から飛行機で南に一路7時間。時差は1時間だ。東京都23区の広さの島に500万人の人口。国といっても外国人だらけ、まるで租界地のようだ。建国からわずか54年のこの歴史的な東西交易の結節点にはあらゆる所得層、人種、国籍… [全文を読む]
シンガポールとフランスの単純労働者──冷たいは温かい、温かいは冷たい

シンガポールとフランスの単純労働者──冷たいは温かい、温かいは冷たい

外国人労働者を受け入れる枠組みとなる入国管理・難民認定法の改正案が昨年、12月8日に成立した。わたくしごとだが、筆者はフランスとシンガポールに住んだことがある。どちらの国も生活や産業のさまざまなシーンで単純労働を外国人に頼っていた。日本以上に外国人を積極的に受け入れていた点は共通していたが… [全文を読む]